2007年09月13日

【8月21日・第3部】

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/ここでこの間、食ったのすごかったな。生トウモロコシ。

T/トウモロコシは、あそこがうまかったな。焼きトウモロコシ。

/え、どこで食べたの。

木曽福島

/ここは完全に生だったもんな。スイーツ、あれは。スイカみたい。あんなものがあるなんて知らなかったよね。生で食えるトウモロコシがうまいって。いや、鈴木大拙、おもしろかったな。東洋的な見方っていうので、1950年代の終わりから60年代の初めに書いたものを集めた文庫本なんだけど。ビートニクスのことも、鈴木大拙が言ってて。

/鈴木大拙って60年に行った時に、最初にLSDやったんだよね。アメリカで。

/じゃあ、ティモシー・リアリー…。ああ、だから。今読むとヤバイなあって。

/それであと、やっぱりすごく、これは最近発見したいい話だなと思ったのは、モンタレー・ポップ・フェスティバルに、ラビ・シャンカールが出た時に、ラビ・シャンカールが、「葉っぱもタバコも吸わないでくれ」って言ったんだって。

/それで何をやるって。

/その時にヒッピーたちは、要はブツがなくても飛べるんだって言って、東洋思想に行ったっていう。

/へぇ。トランスしたわけですね。

/トランスですよ。だからそれまでみんな、ガンガン、ハイテンションで、ぶっ飛びながら聞いてた時に、ラビ・シャンカールが出てきて、とにかく「タバコも葉っぱも、おれの時はやらないでくれ」って言って。

/エルは?

/エルもやってなかったんじゃない。それでダララランってきて、あれでいっちゃって。みんな、それで東洋思想に一気に走った。 それでね、ジミヘンをステージで紹介したのはブライアン・ジョーンズなんだよな。

/要するにジャンルを超えたミュージック・フェスティバルっていって。

オーティス・レディングは出てたね。

/オーティスとジミヘンのカップリングのアルバム出てたよね。

/ああ、出た、出た。片面ジミヘンで。片面…

/鈴木大拙の本の中に書いてたことで、すごいおもしろかった。1958年ぐらいに、もう「DO IT YOURSELF」って言ってるの。これが結局、パンクの頃まで、ずっと時代精神になる。だからすごいよ、鈴木大拙。息子が、日本で歌謡曲の詞を書いてたって言うんだけど。鈴木なんとかっていうんだけど、だいぶ前、何かで読んで、すごい親子だなと思って。おやじが禅のほうへいって、息子が歌謡曲の歌詞書いてるっていう。名前は思い出せないけども。鈴木大拙読んで、夏目漱石読んで、このへんにはまって、浅川マキとか聞くと、ものすごく先鋭的な感じがするんだよなぁ。

/あと岡倉天心ですよ。

/茂木健一郎もいいけど、やっぱ軽い。鈴木大拙、すごいと思うよ。やっぱりエルやってたんですかね。

/すごいよ、あの人は。だから、昔も話したけど、結局、知的な人はジャンキーにならないんですよ。それはウィリアムズ・バロウズがそうだったし、ギーンズバーグもそうだったけど、自分でLSDとかペヨーテとかハシシとか阿片っていうのを、自分の体で人体実験しても、冷静なんで。
 だからドラッグを自己逃避でやった人って、ジャニスとか、あのへんは、結局不安からやるわけじゃない。でも鈴木大拙とかは、自分を高めるためにやるから。

/宇宙旅行みたいなもんだ。

/からお酒だって、好きで飲んでる人と、たとえばちょっと差別的だけど、何か忘れるために酒を飲むっていう人の酒は違うじゃない。

/ミックは鈴木大拙とか読むの。

/あんまり読まなかったね。

/意外だったなぁ。イサム・ノグチとか、そういうのが再発見される時代ではあるけど。鈴木大拙、意外だったな。年取るって、いいと思った。そういうものを、もう一回出会えて。夏目漱石とかさ、鈴木大拙とか。一回、子供の時、ちょっと触れてるものでさ。すげえって。

/この前の、浅川マキの「夜が明けたら」は、自分達が二〇代で聞いてた時の感じが違うとか、やっぱり「市民ケーン」体験みたいなものだよね。僕がよく言う。「市民ケーン」を二〇歳の時に見てた時と四〇で見ると、違うからね。さっきの木曽の話してたんだけど、木曽福島で、木曽節、聴いた時に、なんかすごいきて。やっぱり何十人かで踊ってるのを見てると。そういうのってさ、自分がそんなことするようになるとは思ってなかったわけ。盆踊りが好きだとかさ、なんで木曽節、俺やってんのかな、とか思うんだよ。ほんとに。
 立川事務所・飯田 ある種、ちょっと変なトランス状態入りますよ。50人ぐらいで。

/でも木曽節の静かなのは…

ーーー静かなんですか。

/鎮魂ですから。

/こう、こうで(拍手)、こうこうだ。それだけだから。

/諏訪湖の花火大会も鎮魂なんだってね。

/鎮魂ですよ。花火はそう。

/(お店の人に)今日、トウモロコシある?

店員/限定だったんですよ。あの時しかなかったんで。

/今度、水曜日くれば食べられる?

店員/いやあ、ちょっと。あれはあれで終わりっぽいですね。もう採れた分だけっていう感じだったんで。

/どこのなんですか。

店員/北海道のトウモロコシでピュアホワイトっていう品種で。一応連絡はしたんですけど、もうちょっとないなぁって感じだったんで。

/盆踊りっていうのも、小泉八雲が最初に日本に来て見た時は、陰盆でやってる時に、みんなその時の小泉八雲が見た盆踊りっていうのは、いわゆる白い浴衣、白装束に位牌のあれを紙でぶら下げて踊ってたって言うから。

/降霊術じゃん。

ーーーご先祖様が帰って来てるわけですからね。

/そうそう。

月島の盆踊りがすごいらしいですよ。キツネ憑きみたいに取りつかれて。ずっと踊ってんだって。お祭りって、御神輿のほうが男の祭りじゃない。盆踊りっていうのは子供とか女の人とかの、もうトランス状態になって、ずっと踊ってるって言ってた。

/木曽節だって、一晩中踊ってたいと思った。

ーーーさっきまでマッドな話だったのに。(第2部参照)

/だから深化してるの。深くなってるんじゃないですか。癒しとか、そういうんじゃなくて、もっと。

/だから僕が思ったのは、けっこう木曽節とか聞いてると、なんか「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」とかと通じるものがあるんだよ。

/子供の時、聞いた時には、ブエナ・ビスタ知らないからさ、なんか民謡で終わってたけど。

/ねぶた、トランスだからね。僕ら(立川事務所・飯田さんと)、行ってますからね。ねぶた。跳ね子で。跳ね子、すごいよ。

飯田/あれ、すごいですよね。次の日、足動かなかったですもん。

/たとえば、その時期、東京のミッドタウンで働いてる女の子が、ふるさと帰って、木曽節で踊ってたりしたら、すごいよね、日本ってね。お盆になると、みんな帰るわけだから。それでふるさと帰って、お祭りで、すごいことやってるわけでしょう。それがすごいな。その構造が。

/前も話したけど、昔、20年ぐらい前は海外がおもしろかったけど、今は絶対日本だな。

/それは言える。

/もう絶対日本。

ーーー日本は金かかるじゃないですか。

/かかるし、やっぱりガイドブックも何もないし。海外は全部あるし、全部マニュアルになっちゃってるじゃない。ロンドンだの。ニューヨークだの。

/スターバックスないとこじゃないと、だめよ。

/台湾で、なんか台北からちょっと先に行ったとこに、けっこういい港町があって行った時に、スターバックスがあって、ガッカリしちゃって。MTVとスターバックスって、けっこう共通するものがあるな。

/だって北京は故宮の中にスターバックス作っちゃった時、終わりよ。

/あれって、閉めたの?

/閉めたって言ってたけど。皇居の中にスターバックスがあるようなもんじゃない。

ーーー日本のお祭りが見たいですね。全国の。立川さん、けっこう見てるでしょう。

/うん。火祭りとか、鞍馬の。なんかプリミティブなものは、ほんとすごいな。

飯田/なんか2時間ぐらい踊ったじゃないですか。なんかいいんですよね。おばちゃんたちの感じも。

/だから、もしかしたら、日本のそういう良さっていうのは、最初に気づいたのは、ある種の、どのぐらいの人数かわからないけど、白人のヒッピーとか、そっちのほうが入ってる。

/外人来てたよね。

/長野とかって、けっこう。筋金入りのヒッピーとかのほうが、そういう情報を持ってるかも。お祭りとか。

ーーー長野県って、あの変な広さがすごい。

/そうですよね。

/違う国だからね。だって南信、北信なんていう言葉があること自体、北スペインと南スペインみたいなもんだよ。

/70年代の初めに、奥村靫正、眞鍋立彦、中山泰がやってたワークショップ「MU」が、よく長野に行ってたもんね。家具仕入れに。

/ああ、民芸家具。

/民芸の。だから、その頃からちょっと民芸運動みたいな動きがあった。柳宗悦じゃないけど。今では、それ普通だけどさ。ギンギンの東京のヒッピーが長野まで夜行列車で行って、民芸家具買い付けていた時代があった。

ーーー当時、そういう民芸調の家具ってはやってたんじゃないですか。

/はやってたよ。話は変わるけど来年さ、ベンチャーズとイベントやんない? 

/この間、近田君と一緒にライブ見に行って。

/おもしろいでしょう。「スマスマ」に出たら……。

/そう、それも言ってたね。ドン・ウィルソンが。

/で、ベンチャーズはスマップの曲やるのに、思い切り練習したらしいんだ。けっこう目覚めちゃって。本人達は、やっぱり今の「青春デンデケデン」の客層はいいんだけど、新しい、何かおもしろいことをやりたいっていうんで、僕が言ったのは「ベンチャーズ・ゴーゴー」。昔のゴーゴーガールがいた頃の、小山ルミとか踊ってた頃の感じのを、来年どこかでやりたい。もう一個あって、歌謡曲とベンチャーズ・フューチャリング・ジャパニーズガールズで、「雨の御堂筋」とか。

ーーー歌謡曲いいですね。

/もうああいうのばっかりで。

/ベンチャーズは実はすごい。いろんなミュージシャンが参加して、それでパッケージ組んで。その中にレオン・ラッセルがメンバーに入ってて。

/レオン・ラッセルって、16ぐらいから、「恋のダイヤモンドリング」ってあったじゃない。あれ、レオン・ラッセルだよ。16歳の時の。

/あ、あれそうだ。

/そうそう。それで曲書いてたのが何とアル・クーパー。そしてその後自分で「ディス・ダイヤモンドリング」。ホーン入れてね。

/ノイズ、本当にノイズだったんだ。でも、ライブ見て、今だとデケデケデケっていうのとか、ドン・ウィルソンのワンコードで掻き鳴らすのっていうのは、まあけっこうすごいな、ぐらいだけど、当時はやっぱり爆音に聞こえたとしたら。

/タランティーノだよね。

/その時に妄想的な解釈を僕がしたのが、シアトルの出身なんだよね。出身というか、シアトルで結成してるわけ。バンドが。1958年に。シアトルって、その後、ジミヘンとカート・ゴバーンとか出てくるノイズのすごいメッカじゃない。
 で、ボーイング社があるの、あそこは。ボーイング社の本社があって。何回か行ってるんだけど、たとえばネイティブ・アメリカンと話をインタビューでしてると、その上をボーイングがワーッと行くみたいな。絶えずボーイングのノイズがある所で。 その前は、B29、B52って、あれボーイングですよ。ということは軍事産業のメッカで。それがベンチャーズ見た時に、あの音は、たぶんボーイングの。

ーーー自分達の環境の中にあった。

/B52襲来の。それで恐怖を感じて……

/考えてみたら、なんかけっこう機関銃っぽいっていうかね。

/そう。機関銃。テケテケテケっていうのは、今はテケテケだけど、ダダダダッっていうか、機関銃の機銃掃射の音っていうのはあったと思う。編隊組んでやって来た時のワーッっていう音とか、キュンキュンとかっていうのも、焼夷弾のヒューンみたいな音したら、やっぱりあの時、日本の…

/さすがだね。森永。

/恐れるよね。DNAに刷り込まれてる恐怖。それで、その後さらに深読みしたのは、あの時ベンチャーズにはまった団塊の世代は、たぶんその後の人生は、最終的には破滅していくんだろうな、みたいな。

/たぶんベンチャーズにハマったところでね、二つの流れがあったと思うね。「ワイプ・アウト」とかのあっち系と、加山雄三さんの方向に行った二つの別れ道があったと思うんだよね。「ワイプ・アウト」って元々サファリーズのヒット曲だから。リキ・スポーツ・パレスでやったんです。サファリーズね。新宿厚生年金会館ではベンチャーズ対アストロノーツっていうイベントやってた。いい時代だったね。

アストロノーツ、すごかったよね。

【第3部 終了】

2007年09月11日

【8月21日・第2部】

/この間、上諏訪の「桃源郷」で浅川マキ聴いたじゃないですか。

/すごかったね。

/浅川マキ、すごい。恐ろしいものがあったね。他のものが全部吹き飛んじゃうくらい。

/収穫はバニラ・ファッジと浅川マキ。

/すごかった。やっぱり人間がマッドでしたよ。きっと、コルトレーンもニール・ヤングも。

/思うんだけど、マッドって言うと、みんな、ガンガンいっちゃってるやつだけをマッドだと思ってる節もあるんだけど、一緒に仕事したんだけど、デヴィッド・シルヴィアンなんて、聖なるマッドだと思うんだ。入り込み方とか。

/ブコウスキーなんかも、そうなわけでしょう。

/そう。だから決してなんか大騒ぎしたりするんじゃなくて、なんか突き詰めてくるところで、常人じゃない世界に入っていくやつがいいよな。それは絵描きでもなんでも、そうだと思うんだよ。変だもん。ある時期までの人って。

スティーリー・ダンは行ったんですか。

/行かなかった。高いし、バックのミュージシャンもイマイチだし。

/23000円ですかね。で、赤坂の夜景が見えるって言うんだけど、一瞬だけだって。すぐ閉めちゃうんだって。なんかクレーム、問題があったみたい。あれっ? みたいな。

ーーー僕なんか、あれ脅威だと思いますけどね。プロモーターとか、どうするのかなと。

/今日はちょっと時間があったんで本屋へ行って、柳美里の「名づけえぬものに触れて」っていう本を買って読んだら、二時間で読めちゃった。本の作りとしてはさ、ハードカバーなんですよ。 普通、僕のイメージって、ハードカバーっていうと、なんか非常に読みごたえがあって、何日もかけて読むみたいな。ものすごいおもしろい物だったら一瞬で読んじゃうけど。今のハードカバーって、作りは立派で値段も高いんだけど、読むと意外と軽いよね。
 で、逆にB級のノベルスみたいなのが、この間、菊池秀行の「プチ・ポリソン」っていう、新宿を舞台にした近未来の不良少年物みたいなノベル。これは簡単に読めるだろうと思ったら、意外と読みごたえあって。あれっ? みたいな。はまっていくわけよ、どんどん。読みながらイメージが広がってきて、自分で映画作ってるみたいな感じで。
 前もミックが言ってたけど、西村京太郎とかで、けっこうおもしろいのあるよ、みたいな。ああいう新幹線の中で読むような物のほうが。

/そうだよな。

/B級好きなのっていうのもあるかもしれないけど、西村京太郎をバカにできないよね。

ーーー時刻表の小説とか面倒くさくないですか。

/いや、島のやつとかさ。

/いや、西村寿行(この対談の二日後に逝去)。

/ああ、西村寿行か。

ーーー西村寿行!

/菊池秀行の、よかったな。

/あと、山田正紀とかね。

/同時に、夏目漱石の「草枕」っていうのを。

ーーーああ、あれはすごいですね。

/ちょっと読んでみようと思って。薄いから文庫本でも簡単に読めるのかなと思ったら、これがすごい。もう葉っぱで言うと、なんかブッダスティック級でドーンとくる。柳美里は、ほんとセイラムで巻いたジョイントみたいな感じでさ、話はシリアスなんだけど、軽いんだよね。

/薄いよね。

/夏目漱石、やばいよ。

/いや、たぶん本人が薄いんだよ。薄いんだけど、ちょっと軽く、ネットとかやってて、余計。

/やっぱり浅川マキと椎名林檎の違いぐらいあるもん。

/なんなんだかわかんないけど、つまんないな。

/やっぱりドーンと来るものが好きなのかな。マッドな。夏目漱石「草枕」やばいよ。

ーーーマッドですよねぇ。

/全然ドラッキーだもん。ちょっと最近思うんですけどね。ミックの発言とか、僕達がなんとなく言ってることっていうのが、なんか非常に仏教的な感じがするの。

/仏教?

/仏教、まあ老荘とか禅とか含めて。あまりにも物質文明に行き過ぎちゃってるみたいなのに関して、話の構造的には非常に単純に、全て行き過ぎちゃってるものに対して、なんか我々はそっちに行かないみたいな。鈴木大拙の本を、この間たまたま読んだら、なんか言ってることが、すごい近いんだよね。シャングリラ20年やってて。

/到達した(笑)。

ーーー仏教だったんですね、シャングリラは!

/欲はあるようで、ない。

/欲はある、確かに。

/あるんだけど。

/でも、程の良い欲だと思うんだ。

/スティーリー・ダン、23000円は行かない、みたいな。

【第2部終わり】

PS
対話中にいう「仏教的な感じがする」「老荘とか禅とか含めて」という発言を補足する。引用が長くなるが……

 神は始めに「光あれ」といった。そうしたら、光明の世界を暗黒の世界が分かれた。この分裂にもかかわらず、エデンという楽園が出来上がった。そこでは、善もなく悪もない、純粋無垢の世界が営まれた。どうして出たが分からぬが、悪魔が出て、住民を誘惑して、分別の知恵をつけた。それから無垢の世界は失われて、善悪是非が限りなく交差する穢土になった。それが創世記の伝説である。
 ところが、禅ではそんな迂遠な話をせぬ。エデンは決して失われない、無垢の世界も遠くに去ってはいない。この穢土がすなわちエデンにほかならぬ。善悪是非の世界がすなわち純粋無垢の楽園である。禅ではこれが自由自在の世界となって、少しもとらえられない境地だと見る。すなわち絶対矛盾の世界が直ちに自己同一、円融無碍のエデンだという。
『新編・東洋的な見方』(鈴木大拙・著/岩波文庫)

という辺のことを示す。

ついでに夏目漱石『草枕』に触れる。漱石先生、山路歩きながら、冒頭いきなり本題に入る。

 智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
 住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る。

これで、すべて言い切ってしまっている。
(文・森永博志)

2007年09月09日

【8月21日・第1部】

立川直樹=T 1949年生。音楽・アートプロデューサー

森永博志=M 1950年生。エディター・作家

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もうすぐ、始めてから20年になる対談「シャングリラ」。20年も同じコンビで対談できるなんて!!世界に類をみない2人の都市遊泳術。

8月21日、まだまだ暑い夏の夜、クラブ・シャングリラは西麻布にある隠れ家のような「ボヘミア」で開催。通りの向かいに見える青山墓地が涼しげ。


山口小夜子も死んじゃったし。

/昨日、三浦憲治(写真家)の事務所にいて、そこの秘書の子が、ネットを見ていて「山口小夜子さん、亡くなりましたよ」っていうんで……。14日に亡くなったって。ミックは知ってました?

/知らなかった。昨日、テレビ見てて。

/テレビのニュースでやってたんだ? 急性肺炎?

/うん。なんか友達が家に行ったら、死んでたらしい。

/そういう死に方だったんだ?

/でも、なんか、変だなぁっていうかさ。一人で暮らしてるとさ、朝のワイドショーの見出しだと、「スーパーモデル孤独死」ってなっちゃうんだよね。それはなんか、一般の人達の考え方だと、一人で暮らしてて倒れたら死ぬけど、孤独死って、なんかすごいイヤじゃない、言い方が。別に孤独に暮らしてたっていいじゃないの。

/ドラマ作りたいんだよね。

/「孤独死」はないよね。一人暮らしの人、全部悲惨だってことじゃない。

/でも、なんか多いですよ、やっぱり。一人で暮らしてる人間のほうが、やっぱり死ぬ確率は。

/なんでかね。

/ねぇ。わかんないけど。統計的にね。周り見てると。
で先週、日曜日、「ル・テアトル銀座」に早乙女太一を見に行ったんですよ。

/ああ、僕も行ったよ。

/1部、2部、3部になっていて、3部目の「千年の祈り」って、すごくなかったですか?

/頭に「ある晴れた日に」がくるやつ。「イッツ・ア・ビューティフル・デイ」。

/ミューズでしたよね、完全に。でもあの3部の中の後半から、心中物なのかな。霊界みたいな世界が。非常にローテックな演出で舞台に出現して。

/そうなんだけど、もうちょっと、なんかやったら、もっと良くなるよね。

/やっぱり歌舞伎座とは違う、浅草なりの、闇の世界の演出力っていうのは、やっぱりあって。あんまりあれが洗練されちゃうと、つまんないかなぁって。情念の世界だもんな。

/そう。だからね、僕は洗練されたら、つまんないと思うんだけど。もっとくどいんだったら、くどく。もっとドローッとしちゃったほうがいいかなって。

/ああ、それはあるかもしれないね。

/あのね、結局、舞台の幅の問題なんです。だから大勝館っていうのは、狭いじゃないですか。奥行きはあんまりないんだけど。だから結局、幅が取れないの。それが今、たぶん彼は転換期っていうか。

/だからバンドで言えば、ライブハウスでやってたバンドが。

/武道館に行っちゃったみたいな。そこのちょっとしたものがあるね。でも、全然本人の資質からいったら、問題ないよ。

/ああ、全く問題ないですね。

/昨日たまたま「ニューシネマ・パラダイス」の監督。ジュゼッペ・トルナトーレの新作の「題名のない子守唄」を見たんだけど。やられたね。

/それ、試写?

エンニオ・モリコーネの音楽が、素晴らしくサスペンス。ああ、こんなの作っちゃったんだ、みたいな。要はウクライナの怪しげな組織から逃げてイタリアに来た女が主人公で。すごいよ、あれは。ちょっとビックリ。ここまでやるなぁ、みたいな。 だから、ちょっと「バベル」っぽい。「バベル」のあの方向に行って、ちょっと破綻しながら。

/ちょっと破綻しながら作っていくっていうやつですよね。

/破綻しながら、危ういところで。

/だから、たぶんシナリオとかあるんだろうけど、その上で破綻しながら、つっこんでいくような感じですね。

/ちょっとやっぱり、考えさせつつ、なんか知的冒険っていうの。二時間。だから全然、そういうものと「トランスフォーマー」みたいなものとの対極だと思うな。

/映画に対してのアプローチっていうか、作り方みたいなの、ちょっと変わってきてませんか。この間見た、「once ダブリンの街角で」っていうのは。

/いいの、それは? 気になってんだけど。

/いい、いい。すごいいい。だってエンディングが、普通の映画で言ったら、始まりですもん。あれっ、ここで終わっちゃうの? みたいな。

/そういうのが、結局今度のも、すごく不思議な話ばっかりで、ちょっとサブリミナル効果が入ってるの。

/それと、その「ダブリンの街角で」のすごいおもしろいなと思ったのは、音楽作りの現場で、ストリート・ミュージシャンが、一応パソコンは使ってるわけ。それ以外は、一番ローテックなモデルのテープレコーダー。それと穴の開いたギターとか、それからスタジオで、レコード会社にプレゼンするんで、デモCD作るところは、全部一発録りなんですよ。ストリート・ミュージシャン使って。それもすごい克明に撮ってんの。レコーディングのシーンを。
 でも、そのレコーディングのシーンが一番感動的なんだよね。なんで、こんなものに自分が感動するのか、わかんないんだけど。携帯も出てこないの。その2人の主人公の、彼女のほうの家には電話もない。その映画監督の中にあるのかな。パソコン、携帯的なものを排除して物語を作っていくっていう。

/たまたま今、渋谷東急本店で僕がプロデュースした渡辺プロの50周年記念展のファイナルやってるんだけど。

/写真展。

山下敬二郎のギターとか、昔の台本とかも展示して、土曜日に宮川彬良さんのトークショーやったんだ。なんで最近の音楽がつまんなくなっちゃったのかっていうのは、みんなが合って話さなくなったんじゃないかって結論を引き出した。たとえば作詞家と作曲家が会って、歌手とかさ。やっぱり宮川泰先生だとかさ、レッスンって重要なわけ。だから馬飼野康二さんが作った、たとえばキャンディーズの曲でも、レッスンしてたのは宮川泰先生。こういうふうにやると映えるとかっていって。でも、今、そういうのがないじゃない。

/だって、もうデータのやりとりだけだものね。

/そうそう。だからたとえば「恋のバカンス」とか、そういうのだと、全部譜割りに対して、「♪~恋の終わりは」ってつけていたのが、それが今の音楽だと「コイノオワリハ」ってなっちゃっても平気みたいな、言葉が全然、メロディーと関係なく、はまってればいいっていうふうになっちゃったの。やっぱり、プロの作曲家っていうのは、ちゃんと日本語のイントネーションとスコアっていうのを合わせていたわけね。

/そういう現場でのコミュニケーションがなくなった。現場での。

/日曜日に木の実ナナさんが来てて、ナナちゃんと話してたら、やっぱり昔、「ホイホイ・ミュージック・スクール」って、5日リハやってたんだって。

/それ、テレビの番組で。

/テレビの。5日練習やって、1日本番がある。全部生なわけよ。それをいわゆる毎週やってるわけだから、やっぱり学校みたいだったって言ってた。だからどうしたってうまくなる。だから名言だと思ったんだけど、バラエティショーっていうのは、今はテレビのバラエティって言ってもお笑いだけじゃない。でもバラエティショーっていうのは、ナナちゃんなんかに言わすと「歌があって踊りがあって、芝居があって、お笑いがあるのが、私はバラエティショーだと思ってる」と。

/ということは、結局、大衆演劇なんかでやってる。

/そうそう。だから全く早乙女太一の、芝居があって、踊りがあって。

/あれがバラエティですよね。

/そうそう。あれがバラエティ。だから大衆演劇っていうバラエティなの。それの時に、やっぱり最初の話に戻るけど、バラエティのものが脈々と残っていたのが、今、早乙女太一みたいなのがくるから、すごくおもしろい。

/そうでしょうね。

松井誠も良かったですが。

/松井誠もいいですね。

/早乙女太一が出てくると、みんな、つらいだろうね。でもやっぱり、日替わりで一日何公演かで舞台に立っている人の底力っていうのは、ああいう時、すごいわかる。早乙女太一を見てると。

/そうですね。でも、その前に、代官山のユニットで、ビル・ラズウェルの「METHOD OF DEFIANCE(メソッド・オブ・ディフェンス)」ライブ観たんです。Pファンクのキーボードのバニー・ウォーレルとか、ニューヨークからきて。二回公演。二回とも近藤等則が出てたんだけど、なんかそれもすっごい良かったんだよね。見てて、高揚感が、ものすごくハイになる。
 ステージに立ってるミュージシャンたちが、その時のシチュエーションを、エンジョイしてるのがわかるの。音出して。高揚してる感じが。そうすると、早乙女太一の舞台の高揚感と、なんか重なってくるんだよね。
 前は、たぶんこっちは大衆演劇とか、こっちはニューヨークの最先端の音楽っていうふうに、どこか自分の中でも分けてたけど、最近なくなっちゃったんだよね。

/いい物っていうのが、たぶん全部、前もちょっと話したけど、並列みたいになってるんじゃない。 たまたま今、ちょっと「ロックの名曲」本みたいなのを書いてるんでさ。それで、クロスビー・スティル・ナッシュ&ヤング(CSNY)とか、思い出すために聴くとさ、「オハイオ」とかすごいんだよ、今。これは「オハイオ」を聴いて、やっぱり70年とか、それぐらいの曲なんだけど。

/うん、なんか言ってましたよね。

/それで資料をみてて、すごくかっこいいなと思ったのは、その「オハイオ」っていうのは、デヴィッド・クロスビーが、雑誌「ライフ」を、ニール・ヤングに見せたと。

/70年頃の。

/それでそれには例のベトナム、北爆が始まった時に、全米でデモとかストライキが起きてさ、それでケント・オハイオだから、ケント州立大学でケント州事件っていうのが起きるわけね。州兵が出て、4人学生が殺されちゃうんだよ。それを見て、すぐにニール・ヤングが20分で曲を書いたって。20分で曲書いて、すぐ翌日にスタジオに入って、すぐレコーディングして、それをアーメット・アーティガンに送って、1週間後にシングルが出たんです。

/パソコンがない時代にね。

/そう。1週間後にシングルが出て。それは、その時に有名な「ティーチ・ユア・チルドレン」っていう曲がチャートを上がってる時に、そんなの無視して出して、その「オハイオ」は全米7位になるわけ。それはやっぱり、速さを持ってる時にすぐやっちゃう。メッセージ性。でもちゃんと生きてる感じって。

/その時の、やっぱり時代なんだろうな。

/すごいですよ。アーメット・アーティガン、それを出してちゃうわけだから。

/それをやったのは、ラップ。絶えず、なんか出来事みたいな。

/出来事とか、そういうものに対して敏感じゃなくなっていくと、ダサイと思うな。

/そうですね。だってロックそのものが出来事だもの。エルビス・プレスリーが登場した瞬間なんてのは、間違いなく時代の出来事だもんね。

/ウッドストックだってそうでしょう。

/出来事なんだよ、きっとね。だからボブ・ディランがエレキ・ギターを持ってニューポートに出てきた瞬間も。

/なんかさ、出来事に対して鈍くなってるような気がするのね。

【第1部終了】

2007年07月12日

クラブ・シャングリラ 4/26 第2部

立川(T)/俺ね、最近、キングクリムゾンの四枚組っていうのを買ったんです。

森永(M)/二枚組のじゃなくて?

T/いや、四枚組。六九年のフィルモアとか何か、すごい。これは、夜中しか聴けないね。

M「エレファントトーク」はやっぱりやばいですよね。

T/いや、すごい。やばい。

M/あれ超えてると……。

T/やっぱりクリムゾン……結局、ピンクフロイドはクリムゾンなんだよ。俺、思った。

M/クリムゾン、やばいですよ。「エレファントトーク」……。

T/いや、クリムゾンとフロイドだよ。それに尽きるな。それ考えたら、ELPなんか歌謡ロックみたいなもんだから。

M『魔界世紀ハリウッド』ですね。

T/これはもうちょっと映像がすごいですよ。

M/でも、その諏訪の桃源郷っていうバーは、ちょっとそういう匂いがするの。そのロスの街とか、マイアミのね。それ、すばらしいですね。

T/うまくできたよね。

M/だから、熱海にもたぶん同じような感じのあるのかもしれない、探せば。

T/でも、まあ自分たちでロックバーをつくっちゃったのがいいと。

M/うん、そうですね。

T/でもさ、何かこう、月イチでシャングリラやろうっていってよかったのはさ、やっぱり話が尽きないですよね。結局ね、これ、月イチがいいんだよ。

M/三ヶ月とかになるとつらいですよ、たしかに。

T/あのね、思い出すのにさ、いまの話をしたいわけだよね、僕らは。きょうのミッドタウンもそうだし。

M/そうね。ミッドタウン見て、ちょっと行かなきゃわかんないしね。あんまり入りたいとは思わなかったけど、入って、タバコ吸えるっていうのは衝撃だね。たったそれだけのことなんだけど。

T/で、丸の内ハウスがあしたオープンするんだけど、おととい行ったんですよ。内覧っていうので。行ったときに、すごくいいのは、新丸ビル。新丸ビルの七階に丸の内ハウスって、佐藤クン(佐藤俊博氏)とか、いろんなまあ、わりといままで……。

M/八〇年代組がまた復活してるんだよね。

T/すごくいいのは、たとえば『ソバキチ』って店なんか、ほんとに、全然値段高くない蕎麦屋で、何かつまみで酒飲んでいられて。で、表が東京駅が見れるところで、テラスになってるんですよ。外で食えるの? って聞いたら、全然大丈夫ですよっつって、升酒か何か出てきて。で、『来夢来人』って女性専用スナックってのが。で、まあ内覧だったからその日は入ることができて、森進一とか流れてて。だから完全に歌謡曲系かな。

M/ああ。で、朝までやってるんでしょ。だからさっきのミックの話、ようするに、これまでは、むりやり上に行こうとしてたのを、やっぱもう、上に行ってもきりないし、まあある種の限界……無意識のうちに。下のほうに落としてんじゃないのかな。

T/あのー、たぶんね、ヒルズっていっちゃったときに、まあそのちょっと、そのネーミングみたいなんだけど、ヒルズっていったときに、たぶんそこにビバリーヒルズとか、そういう何かちょっと上に行こうっていうのと、タウンっていったときに街をつくろうと思う人の違いが、ものすごいそこにコンセプトに出てるんじゃないかっていうのが、ちょうど六本木に住んでて思うんだけど、何かその二つのところに感じるのね。だから、結構いろんな店が入ってるんだけど、あんまり声高に何が入ってるっていわないじゃん。その感じがいいんだよ。ヒルズって、たとえばもうほんとに、五万円の中華が入りましたよって……どこが入ったとか、次郎が入ったとかって、すごく一体何なんだみたいなさ。

M/タバコ吸えるのすごいですよ、ミッドタウン。

T/すごいよね。

―― 地べたにちゃんとあるからじゃないですか。地べたのなかにっていうか。

M/ああ、それもあるかもね。まああと、風水だ。風水だと思うね。風水学。ものすごい大事ですよ、風水は。中国人とかも入ってるかも、中国はもう全部いまだにそれですからね。オリンピックの会場決めるのも全部風水。敏感なんだって、そういうのに。だからたとえば、俺、中国人じゃないけど、六本木ヒルズに行ったとき、何回か行ってすげえ調子悪くなったみたいな、やっぱあるんじゃないのかなあ、日本人のなかにも。その、気みたいなものに対して、あるのかもしれないな。

T/でも、街は面白いな、いま。ものすごく。東京がやっぱ、またすごく面白くなってくる。

M/だから結局、もう一回酒飲もう、みたいなね。僕はね。ラジオで言ったんだけど、もっと酒飲んだほうがいいよっつったの。元気なら。酒飲んでうまいもの食って、いい音楽聴いて踊ってナンパして、それで人に迷惑かかんなきゃいいじゃんって。

T/夜遊びでしょ。

M/夜遊び。だからロハスが一方にあって、それはそれでいいけどね。

T/田舎暮らしとかってそれで全然いいし、否定もしないし、たまに行くといいんだけど、みんなが田舎暮らしになったり、前も話したけど、作務衣とかになっちゃったらやだよなあ。

M/田舎暮らししてる女ってよくないっすよね。

T/ないですね(笑)。やっぱり小股切れ上がらないですね(笑)。

M/ヒール履いてないと。

T/やっぱヒールですよ。ジャージはないだろうね。

M/ないし。そうなんだよなあ。やっぱりおかしいもん、ロハス系の女って。

T/何か、ちょっと『クロワッサン』入っちゃってるよね。

M/『クロワッサン』入ってるし、ちょっと精神主義も入っちゃって。

T/でも、この店(西麻布のテテス)から、ソフトシェルクラブなくなったの残念だよね。でもいま、マッケンと二人でミッドタウンの地下の店でビール飲みながら待ってたんだけど、ミッドタウンはとっても、何かこう、近未来の空港みたいでよかったね。

M/そうそう、ターミナルみたいなね。いや、意外でしたよ。ある意味、近未来のミドルクラス……ミッドっていったら、何かある意味、いい意味のミドルクラス。丸の内とはちょっと違うじゃない。六本木ヒルズも違うけど。何だろうなあ。妙な安定感。日常の何か、もう抜け感。まあ、シャレがきいてるんじゃないですか。だって、セブンイレブン入ってるんだもん。あれ、シャレとしか思えないみたいな。地方から来た人、ショックなんじゃないの。

T/あの手の、セブンイレブンの白いロゴはちょっとインパクトあるよね。

M/あれ、だから、一種のポップ・アートなのかな。

T/だから、ものすごく、なかのスーパーマーケットが充実しちゃって。これ、結構、昔のあれでいくと、ちょうどいまのヒルズのちょっと裏のほうに、ユーラシアン・デリカテッセンとかあったじゃない。いわゆるデリのいいのがあったでしょ、六本木に。

M/そういうのがいっぱいあった。

T/そう、いっぱいあったもん。だから、そういうのが、何か意外と、ミッドタウンのなかに違う形で戻ってきた感じがすごくした。それがものすごくいいのかもしれない。何かやっぱ、妙な落ち着きが……バーも、ヨルっていうバーがあるのよ。YOLって書いて。で、それね、やっぱ朝の九時ぐらいまでやってる。

M/ええっ、あんなかで? それは六本木だからじゃないですかね。

2007年07月11日

クラブ・シャングリラ 4/26 第1部

立川(T)/居酒屋研究会の太田和彦に、「俺のこと嫌いなんだろ」って言われて。何か居酒屋とか、研究するもんでもないだろみたいな。

森永(M)/居酒屋研究会を見て、ふざけるなと思ってやったのがシャングリラですよね。

T/それが何かこう、一〇年以上経って歴史的会合を果たすわけですよ。「あの人たちはいい人だ」みたいな。

M/最初、伊丹十三みたいな感じしちゃった。

T/文庫本を送ってくれたの。『居酒屋道楽』ものすごいよかったよ。アナログで、すごい文庫なの。こういうことって必要だよなってぐらい面白い本だった。

M/読んでみよう。

T/それはさ、バスで東京を旅するんだよ。すごい何かね、ちょっとロード・オブ・居酒屋っぽくて。

M/もともと広告代理店にいて……。

T/うん、だけど、もうそういうのはいいんだけど、要は自分はもうそんな変な、先を走ろうとは思わず、楽しく生きたいっていうふうになってるから、僕らと同じなのよ。要は、だから彼らはたぶん近親憎悪だったと思う。僕らに対して。同じことで……。

―― 近親憎悪(笑)。

T/だから、ほんとにそう(笑)。近親憎悪。

M/で今日は、ミック・ロック中村勘三郎写真展を観て……ほんと、奥のスペースの真っ赤なコーナーの、ああいう写真展示ってまずありえない。真っ赤なスペースに役者のポートレートを展示する……。

T/うん、あれ、すごくいいでしょう。

M/歌舞伎役者の人たちを、日本人のカメラマンが、まあ名前出せば、篠山さんとかいろんな人が撮ったりして、撮りたい人いっぱいいると思うけど、ミック・ロックが撮ったのってどこが違うんですかね、ミックから見て。

T/あのね、中村勘三郎さんが言ってたのは、ブロマイドじゃないっていうのと、それから、僕は撮影してるの見てたから、あおるんだよね。

M/あっ、そう。

T/だから、普通のカメラマンが撮ると、歌舞伎役者に『あ、よろしくお願いします』で終わり。ミック・ロックはもうね、あおるのよ。

M/何か粘着質は粘着質。ちょっと、ゲイっぽいところある?

T/ゲイっぽくはないけど、アニマルだよ。

M/饒舌?

T/ものすごいしゃべる。もうしゃべり続ける。もう、すっごい勢いで撮る。

M/ということは、そういう濃密な感じってのは歌舞伎やってる人たちにも……。

T/通じるから、撮られる側も、どんどん出しちゃって。それはみんな控えめに、「よろしくお願いしまーす」って言って、撮ってたから、向こうも……。

M/あ、そんなもんかっていう感じじゃないの。

T/いや、そんなもんかっていうか、やっぱり、いわゆる歌舞伎絵が写真を撮られる役者の常識からは抜けてなかったんじゃないの、いままで。で、勘三郎さんも自分で、歌舞伎の役者っていろんなタイプがいるけど、もう俺はロックだからさ、っていうのと波長がすごく合った。

M/勘三郎さんは、実際ロックを聴いてた人なんですか。

T/話したことないんだけど、どうなのかな。ただ、自分のノリがロックだと思ってんじゃないの。そういう、ロック聴いたのかどうかって話はしたことないけど。

M/ああ、そうですか。ちょっと玉三郎とは違う?

T/全然違う。玉三郎は……様式美は入るけど、様式にとらわれてないもんね。それで見るとね。ただ、様式の部分はちゃんとやってて、なおかつ新しいこととかやってるから、やっぱりあの人すごいという。

M/伝統のあるもので、ゆえに伝統をいかに超えるかっていうところが面白いんじゃないですかね。超えられない部分もある……っていうところもあるから。

T/だから、ストーンズとかがさ、たとえばやっぱりブルースとか、というようなルーツを持ちながら、ものすごい新しいことってやっていくのとすごい似てる部分っていうのは、すごくストーンズっぽいかもしれない。

M/ちょっと様式っていうことと関係あるかもしれないけど、阿部薫の本があるんです。で、ようするにフリージャズの奇才、天才といわれてた……で、ほとんど証言なの、阿部薫がいかにすばらしかったか。惜しい人を亡くしたっていう。で、読んでたら、灰野敬二が出てきて、灰野敬二が「あんなん面白くない」って言ってるわけ(笑)。「よかったことは一回くらいはあるが、基本的につまんない、阿部薫は。人間的にも最低だ」と。「かっこいいっていうのと、かっこをつけてる」っていうのは違うと。で、「阿部薫はかっこつけてただけ」だって、一人だけ言っちゃうんだよね。坂本龍一も、ちょっと、まあ面白かったかなーぐらい。だから何なの? っていう。その感じかな。やっぱり、その、阿部薫は実はロックやりたかったって。で、灰野敬二とロックをやるはずだった。で、ロックってやっぱりある種、様式あるじゃないですか。

T/たとえばこれはね、モーリス・ベジャールが言ってたのは、「頼まれ仕事と自分からやる仕事とどっちが自由がありますか?」と。「頼まれ仕事のほうが自由がある」と。「期限も金も決まってる」と、「そのなかでクリエーションすることが自由だ」と。
……まあ僕じゃなくて中沢けいさんがどっかでコラムに書いてたんだけど、いまネットの時代になって、ネットのことで原稿頼むとすごく困るんだと。「分量はおまかせします」って。でも、やっぱり私たちは、分量を指定されたときに、たとえば400字6枚って言われて、どういうふうにそのなかでストーリーをつくっていくかっていうことをやったんだけど、自由に書いていいですよっていうのは、僕もすごく困る。

M/いま、だからⅰPODになるともう何万曲入ってるんだかわかんないけど、もう何かわかんないっていうか、無限……もう時間も空間もなくなっちゃってるんだよね、たぶん。

T/たとえばアナログ時代に、まあずっとレコードのプロデュースをしていたときに、アナログだとだいたい片面二一分でマックスぐらいで、A面とB面どうするか考えるけど、CDになったらいくらでも入りますよって言われちゃうと、ちょっと待ってくれと……。

M/そうですね。

T/あのさ、世界に背を向けてるっていう人いるけど、僕、前から思ってるんだけど、本当に世界に背を向けてるとか、売れなくてスネてるだけとか、ってあるじゃない。フリーだっていうことは実は、かっこいいんだけど、あんまりかっこよくないのかもしれないな。

M/いや、でも、その灰野敬二の「かっこいいのと、かっこつけてるのとは違う」っていうのはすごいこれは正しいと思ってね。

T/ものすごく正しい。だから現代音楽もそうじゃない。ルールのある現代音楽と、破壊するんだとかっつって、何かただごちゃごちゃやってるやつとは根本的に違うよね。

そりゃクセナキスとかジョン・ケージみたいに、やっぱりロジカルがちゃんとして、構成される現代音楽と、ただ何か、わかんないけど、缶たたいて、みたいなのとくらべるとやっぱりもう、笑っちゃうんだよね。

―― 森永さんは灰野敬二さんと面識があるのでは?

M/覚えてないんだよね。たぶん、だからアップルハウス(60年代渋谷にあったコミューン)ロフトアラーフは関係あって、オシメ(ロスト・アラーフのドラマー)は、庭でドラムを叩いてたらしいんだけど。僕は会ってるはずですよ、灰野敬二と。でも覚えてないんだいよね、あのころってね。ミックもそうだろうけど。

T村八分の本とかに、僕が出てきてて、チャー坊と山口冨士夫を結びつけたっていわれても、そんなに……(笑)。俺は、何かどっかで飲んでて、『おい』とかってのことでしかない

M/そのときは、ただの日常だからね。

T/フラワートラベリングバンドのほうがかっこいいよね。

M/うん、そうそう(笑)。フラワートラベリングバンドのほうが全然。でも、灰野敬二は何か、かっこいいような気がするけどね。とにかくデカイ音出すっていうところで、演り続けるところは。

T/GSあたりでいえば、こないだ、ほら、ヒロミツは死んじゃったけど、やっぱりモップスなんかはアニマルズとか本当にやってたから、すごくかっこいいなーと思ってるんだよ。でも何か、そこでヒロミツがああいうキャラになっちゃったから、モップスって過小評価されてるけど、やっぱモップスって……。

M/そうですよね。

T/だから、お互い評価されているのと同じぐらい、実はモップスって評価されるべきバンドだったと。星勝もすごかったしね。

M/星勝も…。

T/そのあと、やっぱり陽水の一連のやつやったときに、やっぱりプログレだもん。陽水って完全プログレですよ。

M『氷の世界』とかね、ロンドン・レコーディングのね。で、話が飛ぶけど『白いドレスの女』って映画をきのう久しぶりに見たんですよ。中古ビデオで買って。原題『ボディヒート』って。大傑作ですね。

T/大傑作ですよ。もう死んじゃったから、話すけどさ、ちょうどその『白いドレスの女』やってたときにさ、伊丹プロのずーっとプロデュースやってた細越さんっていうのが日活にいたのよ。照明あがりで、ロマンポルノで結構いろいろプロデュースやってて。いつも会うと「ミック、最近何か面白い映画なかった?」って言うわけ。「いや、『白いドレスの女』最高ですよ、細越さん」で、観にいって、三週間ぐらい経って、ばったり撮影所かどっかで会ったの。ピッと、ひらめいて映画つくったって。『黒い下着の女』(笑)。最高でしょ。

M/もうとにかく……あれ、でも、ほんとにあの女はワルなのかなあ。最後のシーン見ると、せつない感じするんだよね。それまでは完全に犯罪……計画的犯罪が……。

T/そういう意味では、『白いドレスの女』はちょっと忘れられてる傑作だな。

M/とんでもないワルなんですよ、実はそのキャスリン・ターナーは。でも、最後のね、タヒチかどこかの……たぶんタヒチだと思うんだけど、結局カネ手に入れて、その南の島でひとりいるんだけど、あの最後のエンディングのシーンの表情は……。

T/何かあの、音楽、誰だったか忘れたけど……。

Mジョン・バリーね。

T/ムーディーな音楽が流れてて、やってんだよ。で、何かこう、ベッドでやってて、「か、火事だ!」って言って、窓の外から火事見てる。そっからもう……。

M/つかみが暑いのよ、その年はもう。異常気象なの。暑くて暑くて。

T/あれとか、あのころでいうとあれだよな。ジョン・カサベデスの『グローリア』とか。もう頭のつかみ。ね。

M/『白いドレスの女』。それはね、『ロング・グッドバイ』は村上春樹訳の読んでてね、何か違うなーって思ったわけ。僕は、あれは。何か、『ゴッドファーザー』と、たとえば……何だろうなあ、やくざ映画。もっと何かこう、ぶちきれてるやつ。『スカーフェイス』見たいんだよなあっていうときに、実は『ゴッドファーザー』だっていわれても困っちゃうよなって。読んだんですよ。読んでたしかに、まあよく、文学か、みたいな。非常に物申す部分があってね。文明批評の部分が。

T/どちらかというとさ、感覚が劇画なんだよな。

M/劇画なんだよね。で、何か違うなあって。

T/純文学とかいうよりは劇画なんだよな。劇画と、あとヌーボーロマンな。

M/ヌーボーロマンね。ピカレスクロマン。で、映画は大好きなの、僕、『ロング・グッドバイ』。で、こないだまた見たら面白い……そこで『白いドレスの女』も見たら、めちゃくちゃ面白いですよ。ものすごい、かっこいい。

T/『白いドレスの女』、ビデオ買おう。

M/まあ今度送りますよ。ようするにエンディングがわかんないの。果たしてこれはどうなのかな。この女は幸せだったのかどうなのか、何もかも。前から言ってる、エンディングわかんないっていう。

―― それ、重要ですね。

T/エンディングわかんないっていうのが、やっぱり映画の分かれ道だな。

――エンディングわかんないって、『ドルチェ・ビータ』(甘い生活)もわかんない。

M/あれもわかんないね。いや、『甘い生活』のわかんなさよりは、とりあえず『白いドレスの女』は一応ハリウッドだから。だから、ハリウッドのなかではやっぱり結構監督いっちゃってると思うよ。

T/いや、ほかの人よりは狂ってると思いますよ、あれは。

M『LAコンフィデンシャル』も同時に買ったの。

T/あれも『白いドレスの女』系だ。

M/そう、だからその二本買ったんです、僕。

T/『LAコンフィデンシャル』と『白いドレスの女』は共通するものがある?

M/あるある。

T/あ、やっぱり。

M/あと、最近ね、映画公開に関する情報っていうのは、出てるんだけど、それがいつ公開かっていうと、前は宣伝と公開がうまくつながったと思うよ。

T/だから、もうね、情報が錯綜……。錯綜っていうか……。

M/情報が早く出すぎてますね。

T/そうそう。だから、『バベル』なんかも、まだ四月二八日からですよ。

M/これからじゃない。

T/これからなのに、もう終わっちゃったのかと思った。

M/だから、普通は映画が公開されてから面白い、面白いって言ってたのが、その前にもうやっちゃうから、爆撃みたいに、もう終わったような気分になるんだよね。まだやってるわけじゃない。

T/『バベル』なんかは不幸だと思うわ。あんな映画が、みんなあれは絶対……ものすごいですよ。やっぱり『アモーレ・ペロス』『21グラム』と、今度は『バベル』観て、ああ、そうか、『21グラム』の監督だったんだって思ったわけです。すばらしいですよ。映画は大丈夫だって思えるような。

M/で、映画の場合……音楽でも何でも、すべてのものそうだけど、それをつくる側とそれを見る側、読む側がいて成り立つものじゃない。それがなくなっちゃってるんじゃないですかね、いま。メディアが中心に入っちゃって、つくる側とメディアだけで盛り上がって……。

T/よくないよね。よくない。

―― 森永さんは試写会の会場まで足を運んでますか……?

M/うん。

T/僕も行きますよ、たぶん。好奇心だもん、すべてが。

M/実券っていうかさ、五月七日、長者町にクレイジーケン・バンド見にいくけど、予約するのが、すげえ大変でさ。また長崎から電話して取ってもらったけど。ほとんど取れないって言ってたね。だから、チケットのありがたみ……っていうのかな。

T/ずっと同じですよ。だから高田とかのチケットを取るとか、歌舞伎のチケットを取るとかと同じ、その初期衝動ってのがあるのを、みんな忘れてるんだ。

M/何だろうなあ、チケットに対する思いっていうのは。「もう、ああ~っ!」っていう女の子のさ。あれはすごい不思議だと思うね。それはもうビートルズが日本に来たときと、変わんないものがあるのかな。その女の子の……。

T/それが文化なんだ。初期衝動っていうか。

―― 立川さんはチケット買うときどうするんですか。

T/プレイガイド行って買うんだよ。

―― プレイガイド、どこのですか。

T/だから銀座の鳩居堂……。

―― ああ、そういうところにみんな並ぶんですか。

T/鳩居堂のプレイガイドが、僕らは定番ですよね。あと、紀の國屋とかも。あと、伊勢丹にもある。

―― そこにはジッケンがあったわけですか。

T/もちろん。だからそれで、チケットのデザインも全部やってたんだよ。『ぴあ』が出てきてから、あの変なラメラメのわけのわかんないのがついた、コンピュータでね。

M/チケットはやっぱ宝物だもん。だからみんな、それをとっておいた。半券をね。

T/全部デザインが……だからビートルズもそうだしね。

M/もうビートルズなんかもプレミアついてると思うけど。でも、まだそういうチケットに対するパッション、あるんだよね、正直。だから取れないところにみんな、どっちかといったらすげえつっぱった女の子たちが行ってるんだよね。これだ! みたいな。チケット取れたわ、みたいな。で、ほんとに好きなんだよね、その音楽のこと。

T/あのさ、やっぱりさ、ものを見るとか、お出かけとかっていうのがものすごい重要だってことを……。セックスもさ、やんなきゃいけないんだよ。

M/だから、同じだと思うな。チケット取るのとセックスと。

T/チケットとセックス。

M/ようするに、不良なんだと思うんだよね。それ、チケットを、何か必死になって取ってる女の子ってやっぱ不良だもん。ビートルズに最初に行った女の子たちは、その後みんな水商売になっちゃったみたいなさ。

―― ほんとですか(笑)。

M/いや、だいたいそうだよね。ヒルトン・ホテルに突っ込んだわけ。で、その子がすぐ……。

―― 突っ込んだってどういうことですか。

M/だから追っかけで、ヒルトンの入口でガードしてた機動隊のなか突っ込んでって、退学になっちゃった。それで、二十歳になって再会したら、銀座のクラブで働いてたんだよね。そういう女の子いっぱいいた。

―― 立川さんはビートルズのスタッフにまぎれこんで入ったっていうのはほんとなんですか。

T/ほんとですよ。僕なんか仲がいいやつで、ちょっと有名人間はだいたい水行ったよね。水行って、それで僕が結構恩恵にあずかっていたのは、銀座行って……だから、つまり、お金を払うシーン、界隈がないからさ、お金を払うシーンだけ店のやつに見せればいいっていうわけよ。で、二〇〇〇円ぐらい払うわけ。そうすると、来てるほかの客につけちゃうわけ、まわしで。で、俺たちは金を払ってるところだけ見せればいいから(笑)、二〇〇〇円で飲んでる。

M/学割っていう(笑)。でも、チケットはね、絶対ゲットすべきだよね、どんな手使ってでも(笑)。チケット代より高くついたりするんだけど。

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