モーツァルト・伝説の録音

ジュール・ブーシュリ
[1877-1962]
Jules Boucherit

[第1巻の構成について]CD12枚収録

全集の第1巻には、SP時代の名ヴァイオリニストたち、弦楽四重奏団が登場します。史上初めての録音や選りすぐりの名演奏を集めました。ヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリン・ソナタ、弦楽四重奏曲の順にそれぞれテーマごとにわけ、CD1−12に構成しました。ここでは同じ作品の演奏者の違い、カデンツァの違いなどの聴き比べが楽しめます。それぞれの録音・演奏については、ミニガイドをご参照ください。

あえて、電気的なノイズフィルターは使用せず、演奏者の音楽性、録音時の空気感まで再生。

音楽性を重視することを第一に考え、針音(スクラッチ音)を取るための、電気的なノイズフィルターをかけることはやめ、演奏者の音楽性、録音時の空気感まで再生できるよう最善を尽くしました。

※試聴版はファイルサイズを圧縮した音源を使用し、音質もお使いのPC環境に強く左右されます。
 CD版の音質とは大きく異なりますことご了承ください。

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CD-1 世界初録音集——協奏曲録音の黎明期(機械式録音[ラッパ吹き込み])WORLD PREMIER RECORDINGS

作品名 録音 演奏 ガイド
1

ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219
第3楽章よりメヌエット

Minuet from Violin Concerto No.5 in A major, K.219

1906年
パリ録音
ジュール・ブーシュリ(vn)
ルイ・ディエメール(p)
Jules Boucherit(vn)
Louis Diémer(p)
最も古いモーツァルトのSP盤のひとつ。現代の人にはほとんど忘れられたフランス楽派の巨匠ブーシュリ。1892年15歳でパリ音楽院の1等賞を受賞。モーツァルトを得意としていたが、病弱のため早くにコンサート活動を停止した。パリ音楽院の教師として後進の指導にあたり、ボベスコ、ジネット・ヌヴー、オークレールらを育てた。内田光子さんはブーシュリのこの演奏を聴いて驚き、絶賛した。本全集の幕開けを告げる名演奏。
ヴァイオリニスト森悠子さんは、この歴史的演奏を聴き大変感動。 パリ留学中の恩師・オークレール の先生にあたるブーシュリの演奏に 驚き、これがパリ音楽院の伝統の奏法、音色と、この演奏を絶賛した。 この曲の世界初録音
2-7

ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216

Violin Concerto No.3 in G major, K.216

1925年
イギリス録音
イェリー・ダラニ(vn)
スタンリー・チャプル指揮
エオリアン管弦楽団
Jelly d’Arányi(vn)
Stanley Chapple conducting
The Aeolian Orchestra
この曲の世界で初めての録音。大変古いタイプの演奏であるが、それもまた時代を感じさせる面白さ。ダラニ(1893-1966)はヨーゼフ・ヨアヒムの血縁、32歳の演奏。 この録音の前年、1924年にはラヴェルがダラニの演奏を聴き、感動、彼女に「ツィガーヌ」を献呈している。 この曲の世界初録音
8-15

ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218(カデンツァ: クライスラー)

Violin Concerto No.4 in D major, K.218
Cadenzas: Fritz Kreisler

1924年
イギリス録音
フリッツ・クライスラー(vn)
サー・ランドン・ロナルド指揮管弦楽団
Fritz Kreisler(vn)
Sir Landon Ronald conducting Orchestra
大ヴァイオリニスト、クライスラー初の全曲録音。機械式吹き込み最終期、録音技術の粋を集めた大編成録音。この録音の前年、1923年5月にクライスラーは来日。各地で公演、大評判になる。来日時には関東大震災の前触れともいうべき地震を体験している。 この曲の世界初録音
16-23

ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219

Violin Concerto No.5 in A major, K.219

1924年
ロンドン録音
アーサー・カテラル(vn)
サー・ハミルトン・ハーティ指揮管弦楽団
Arthur Catterall(vn)
Sir Hamilton Harty conducting Orchestra
日本にはほとんど紹介されなかったが、イギリスで大変人気のあったヴァイオリニスト、カテラル(1883-1943)の初紹介。英国コロンビア社の専属として世界初録音を数多くした。以上CD-1では電気式吹き込みが登場する以前の、機械式吹き込みの時代の演奏を集めた。 この曲の世界初録音

CD-2 パリ音楽院派のヴァイオリン-1 ブーシュリとソリアノVIOLINISTS OF THE PARIS CONSERVATOIRE SCHOOL-1

作品名 録音 演奏 ガイド
1-6

ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216(カデンツァ: エネスコ)

Violin Concerto No.3 in G major, K.216
Cadenzas: Georges Enesco

1937年
パリ録音
ドニーズ・ソリアノ(vn)
ジュール・ブーシュリ指揮管弦楽団
Denise Soriano(vn)
Jules Boucherit conducting Orchestra
ドニーズ・ソリアノはエジプトのカイロ生まれ。ジュール・ブーシュリに師事。ティボーはブーシュリへの手紙に「ラジオで一音聴いただけでもソリアノと分かる独特の音色だ」と彼女を絶賛していた。10代で華々しいデビューを飾り、88歳まで現役で演奏活動を続けた。これは師のブーシュリが愛弟子のために指揮をした唯一の録音。ソリアノ21歳。K.216の演奏史に残る名演。
7-13

ヴァイオリン協奏曲第7番ニ長調 K.271a(カデンツァ: エネスコ)

Violin Concerto No.7 in D major, K.271a
Cadenzas: Georges Enesco

1939年
パリ録音
ドニーズ・ソリアノ(vn)
シャルル・ミュンシュ指揮管弦楽団
Denise Soriano(vn)
Charles Munch conducting Orchestra
ソリアノが遺したモーツァルトの第7番K.271a。現在この作品は偽作とされるが、この時代にはモーツァルトの真作と考えられていた。戦前、著名だったメニューイン盤をしのぐ名演といえる。
14-17

ヴァイオリン・ソナタ第40番変ロ長調 K.454

Violin Sonata No.40 in B flat major, K.454

1937年
パリ録音
ドニーズ・ソリアノ(vn)
マグダ・タリアフェロ(p)
Denise Soriano(vn)
Magda Tagliaferro(p)
ピアノのタリアフェロ(1893-1986)はコルトーの弟子、ソリアノより23歳年上の女流ピアニスト。二人は1934年にフォーレの「ヴァイオリン・ソナタイ長調」でアカデミー・シャルル・クロ・ディスク大賞を受賞している。ナチス・ドイツの迫害を逃れるため、第二次世界大戦中、ブーシュリがソリアノらユダヤ系の生徒たちをパリ郊外の彼の別荘にかくまった際に、タリアフェロが援助した。
18-21

ヴァイオリン・ソナタ第34番変ロ長調 K.378(317d)

Violin Sonata No.34 in B flat major, K.378(317d)

1947年
パリ録音
ドニーズ・ソリアノ(vn)
エレーヌ・ピニャーリ(p)
Denise Soriano(vn)
Héléne Pignari(p)
ドイツ軍占領下の1942年、ソリアノはユダヤ教徒であると密告され、他の生徒たちとともにブーシュリに保護されて潜伏、演奏活動を中断する。これは戦後1947年の録音。のちにソリアノはブーシュリの妻となり、古典音楽と並行してブリテンの「ヴァイオリン協奏曲」のフランス初演をするなど現代音楽の促進に尽力。ラジオの定期番組にも出演していた。また、ブーシュリとともに教育にも熱心に取り組んだ。

CD-3 パリ音楽院派のヴァイオリン-2 ジャック・ティボーVIOLINISTS OF THE PARIS CONSERVATOIRE SCHOOL-2

作品名 録音 演奏 ガイド
1-7

ヴァイオリン協奏曲第6番変ホ長調 K.268(365b)

Violin Concerto No.6 in E flat major, K.268(365b)

1927年
ロンドン録音
ジャック・ティボー(vn)
サー・マルコム・サージェント指揮管弦楽団
Jacques Thibaud(vn)
Sir Malcolm Sargent conducting Orchestra
このCD-3ではフランスの大ヴァイオリニスト、ジャック・ティボーの演奏を録音年代順に配列した。このK.268は録音された後に偽作であることが判明した。しかしながらこれはモーツァルト演奏史に残る不滅の名演奏といえる。
8-14

ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219(カデンツァ: ヨアヒム)

Violin Concerto No.5 in A major, K.219
Cadenzas: Joseph Joachim

1941年
パリ録音
ジャック・ティボー(vn)
シャルル・ミュンシュ指揮
パリ音楽院管弦楽団
Jacques Thibaud(vn)
Charles Munch conducting
L’Orchestre de la Société des Concerts du Conservatoire
ティボーは第二次世界大戦中にはドイツでの演奏を拒み、フランスにとどまった。この録音当時は60歳。2年後にはピアニストのマルグリット・ロンとともにロン・ティボー国際コンクールを開催する。
15-20

ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216(カデンツァ: イザイ)

Violin Concerto No.3 in G major, K.216
Cadenzas: Eugène Ysaÿe

1947年
パリ録音
ジャック・ティボー(vn)
ポール・パレー指揮
ラムルー管弦楽団
Jacques Thibaud(vn)
Paul Paray conducting
L’Orchestre des Concerts Lamoureux
ティボー67歳。戦後すぐの録音。円熟期の芸は深まっていく。世界を演奏旅行する多忙を極めたアーティスト人生だった。1953年3度目の来日のため乗っていた飛行機がフランス・アルプスに激突。愛用していた1720年製の銘器ストラディヴァリウスとともに、この世を去った。

CD-4 ヴァイオリンの巨人たち-1 MASTER VIOLINISTS-1

作品名 録音 演奏 ガイド
1-6

ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216(カデンツァ: フーベルマン)

Violin Concerto No.3 in G major, K.216
Cadenzas: Bronisław Huberman

1934年
ウィーン録音
ブロニスワフ・フーベルマン(vn)
イッサイ・ドブローウェン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
Bronisław Huberman(vn)
Issay Dobrowen conducting
The Vienna Philharmonic Orchestra
フーベルマン(1882-1947)はポーランド出身のユダヤ系ヴァイオリニスト。完璧な技巧、繊細な楽曲解釈、気迫に満ちた個性的な演奏で大変な人気があった。すべてのユダヤ人音楽家が、ベルリンで演奏できる日が来ない限りドイツでの演奏を拒否せざるを得ないと、この録音から2年後の1936年に、ナチスの迫害で職を失った同胞音楽家を集め、パレスチナ管弦楽団を創設した。
7-12

ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218(カデンツァ: ヨアヒム)

Violin Concerto No.4 in D major, K.218
Cadenzas: Joseph Joachim

1934年
ロンドン録音
ヨーゼフ・シゲティ(vn)
サー・トーマス・ビーチャム指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
Joseph Szigeti(vn)
Sir Thomas Beecham conducting
The London Philharmonic Orchestra
シゲティ(1892-1973)のモーツァルトのヴァイオリン協奏曲はこれが唯一のレコード録音。13歳(1906年)でデビュー。新型の録音機が採用されたEMI(コロンビアはEMIの中のレーベル)の録音が完全に確立された時代のもの。シゲティの1932年の来日時の生演奏を聴いたチェリストの青木十良さんは、「シゲティのボウイングの美しさを今でも覚えている。シゲティの弓はまるでレールにはまったみたいに、まっすぐに走るんです。G線の音は今まで聴いたことのない音で、まるでアブが飛んでいるよう。今回の復刻はシゲティの生の音を想起させる」と本全集のCDを聴いて感想を述べた。
13-20

ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219(カデンツァ: ヨアヒム)

Violin Concerto No.5 in A major, K.219
Cadenzas: Joseph Joachim

1945年
ニューヨーク録音
アドルフ・ブッシュ(vn)
ブッシュ室内管弦楽団
Adolf Busch(vn)
The Busch Chamber Players
ブッシュの娘がピアニスト、ルドルフ・ゼルキンの妻。ユダヤ系であったゼルキンがナチスを逃れ、1930年代には一家でアメリカに移住した。米国コロンビア・レコードに残したブッシュ54歳の名演。

CD-5 ヴァイオリンの巨人たち-2MASTER VIOLINISTS-2

作品名 録音 演奏 ガイド
1-6

ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216(カデンツァ: フランコ)

Violin Concerto No.3 in G major, K.216
Cadenzas: Sam Franko

1935年
パリ録音
ユーディ・メニューイン(vn)
ジョルジュ・エネスコ指揮
パリ交響楽団
Sir Yehudi Menuhin(vn)
Georges Enesco conducting
The Paris Symphony Orchestra
メニューインはLP時代にもヴァイオリン・コンチェルト全曲集を録音しているが、これはSP時代、幼少より神童といわれた彼の19歳のときの録音。指揮をしたヴァイオリンの恩師エネスコに注目である。
7-12

ヴァイオン協奏曲第4番ニ長調 K.218(カデンツァ: ハイフェッツ)

Violin Concerto No.4 in D major, K.218
Cadenzas: Jascha Heifetz

1947年
ロンドン録音
ヤッシャ・ハイフェッツ(vn)
サー・トーマス・ビーチャム指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
Jascha Heifetz (vn)
Sir Thomas Beecham conducting
The Royal Philharmonic Orchestra
完璧なテクニックで一世を風靡したハイフェッツの録音。あまりに技巧が優れていたため、情感に欠ける、面白みがないとその評価は二分された。RCAは主要なアーティストをロンドンEMIで録音していた。これは、ロンドンで録音されたアメリカ盤。
13-20

ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219(カデンツァ: ヨアヒム)

Violin Concerto No.5 in A major, K.219
Cadenzas: Joseph Joachim

1939年
ベルリン録音
ゲオルク・クーレンカンプ(vn)
アルトゥール・ローター指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Georg Kulenkampff(vn)
Artur Rother conducting
The Berlin Philharmonic Orchestra
クーレンカンプはユダヤ系でなかったのでナチスの時代にもドイツにとどまって活躍した。テレフンケンはナチスの御用レーベルだった。1944年にはナチス・ドイツと訣別してスイスに亡命。シャフハウゼンで50歳で亡くなった。

CD-6 ヴァイオリンの巨人たち-3MASTER VIOLINISTS-3

作品名 録音 演奏 ガイド
1-8

ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調 K.219(カデンツァ: ヨアヒム)

Violin Concerto No.5 in A major, K.219
Cadenzas: Joseph Joachim

1928-29年
ベルリン録音
ヨーゼフ・ヴォルフスタール(vn)
フリーデル・ヴァイスマン指揮
ベルリン国立歌劇場管弦楽団
Josef Wolfsthal(vn)
Frieder Weissmann conducting
The Berlin State Opera Orchestra
ヴォルフスタール(1899-1931)は1929年にベルリン国立歌劇場管弦楽団のコンサート・マスターに就任、32歳で夭折。カール・フレッシュほどドイツっぽくなく、洗練された演奏だ。
9-15

ヴァイオリン協奏曲第6番変ホ長調 K.268(365b)

Violin Concerto No.6 in E flat major, K.268
(365b)

1931年
ブリュッセル録音
アルフレッド・デュボワ(vn)
デジレ・ドフォー指揮
ブリュッセル王立音楽院管弦楽団
Alfred Dubois(vn)
Désiré Defauw conducting
The Brussels Conservatory Orchestra
デュボワ(1898-1949)はグリュミオーの先生として有名。フランコ・ベルギー楽派の正統的な録音をSP時代に残した。グリュミオーに引き継がれた豊穣な音。もちろん1931年当時、6番はモーツァルトの真作と考えられていた。
16-21

ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調 K.218(カデンツァ: ヨアヒム)

Violin Concerto No.4 in D major, K.218
Cadenzas: Joseph Joachim

1942年
ベルリン録音
ハインツ・シュタンスケ(vn)
パウル・ファン・ケンペン指揮
ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
Heinz Stanske(vn)
Paul van Kempen conducting
The Dresden Philharmonic Orchestra
シュタンスケ(1909-1996)はドイツのヴァイオリニスト。カール・フレッシュに学ぶ。1938年29歳で独奏者として活動を開始、1942年のこの録音はその頃のもの。1950年、39歳で南西ドイツ放送管弦楽団の特別コンサート・マスターになる。その後、複数の音楽大学で教鞭をとった。第二次世界大戦まっただ中の録音。

CD-7 女流ヴァイオリニストの競演LADY VIOLINISTS

作品名 録音 演奏 ガイド
1-6

ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調 K.216(カデンツァ: トーヴィ)

Violin Concerto No.3 in G major, K.216
Cadenzas: Donald Francis Tovey

1949年
ロンドン録音
ジョコンダ・デ・ヴィトー(vn)
サー・トーマス・ビーチャム指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
Gioconda De Vito(vn)
Sir Thomas Beecham conducting
The Royal Philharmonic Orchestra
デ・ヴィトーは1907年生まれ。イタリアの女流奏者。1932年にウィーン国際ヴァイオリン・コンクールで1等賞。1935年イタリアPARLOPHONEに初レコーディング。1941年ベルリンでブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」を録音。第二次世界大戦後、1948年ロンドンのEMI専属アーティストになり、SPレコードと初期のLPに優れた録音を残した。
7-9

ヴァイオリン・ソナタ第32番ヘ長調 K.376(374d)

Violin Sonata No.32 in F major, K.376
(374d)

1952年
ベルリン録音
ヨハンナ・マルツィ(vn)
ジャン・アントニエッティ(p)
Johanna Martzy(vn)
Jean Antonietti(p)
マルツィはハンガリーの名ヴァイオリニストで教師であったフバイの教えを受ける。1944年ナチスのハンガリー侵攻でチロルに逃げ、捕らえられた経歴を持つ。戦後1947年にジュネーブ国際音楽コンクールで優勝し、ドイツ・グラモフォンと契約。アントニエッティとはその頃出会っている。
10-15

ヴァイオリン・ソナタ第40番変ロ長調 K.454(シュナーベル&フレッシュ版)

Violin Sonata No.40 in B flat major, K.454
ed. Artur Schnabel & Carl Flesh

1929年
ベルリン録音
エリカ・モリーニ(vn)
ルイ・ケントナー(p)
Erica Morini(vn) Louis Kentner(p)
モリーニはウィーン音楽院に初めて入学を許された女性。彼女の弾くヴァイオリンは、オーストリア・ハンガリー帝国の時代にさかのぼる古き良きヨーロッパの香りを伝える。1938年にアメリカに渡り、1976年に引退するまで活躍。彼女はハイフェッツが一目を置くほどの技巧派であったことはあまり知られていないが、この演奏を聴けばさもありなんと納得させられる。
16-19

ヴァイオリン・ソナタ第34番変ロ長調 K.378(317d)

Violin Sonata No.34 in B flat major, K.378
(317d)

1925年
イギリス録音
マジョリー・ヘイワード(vn)
ユナ・ボーン(p)
Marjorie Hayward(vn)
Una Bourne(p)
ヘイワード(1885-1953)はイギリスのヴァイオリニスト、ヴィルトゥオーゾ弦楽四重奏団のリーダー。ピアノのユナ・ボーン(1882-1974)はオーストラリアのメルボルン生まれ。第一次世界大戦中には同郷の大ソプラノ歌手、ネリー・メルバのピアニストをつとめた。この曲の世界初録音で電気録音最初期のもの。

CD-8 ヴァイオリン・ソナタ集-1VIOLIN SONATAS WITH VIRTUOSO VIOLINISTS-1

作品名 録音 演奏 ガイド
1-2

ヴァイオリン・ソナタ第28番ホ短調 K.304(300c)

Violin Sonata No.28 in E minor, K.304
(300c)

1937年
ロンドン録音
ヨーゼフ・シゲティ(vn)
ニキタ・マガロフ(p)
Joseph Szigeti(vn)
Nikita Magaloff(p)
ピアノのニキタ・マガロフ(1912-1992)は、シゲティの伴奏者をつとめ、演奏旅行でもいつも同行した。二人は戦前、1931年、1932年の2度来日している。マガロフはシゲティの娘イレーヌと結婚。シゲティとマガロフの奏でるK.304、この悲しみは深い。パリで母を亡くした当時のモーツァルトの心情を吐露するかのようだ。
3-7

ヴァイオリン・ソナタ第33番ヘ長調 K.377(374e)

Violin Sonata No.33 in F major, K.377
(374e)

1937年
ロンドン録音
アドルフ・ブッシュ(vn)
ルドルフ・ゼルキン(p)
Adolf Busch(vn)
Rudolf Serkin(p)
ブッシュはユダヤ系ではなかったが、ナチス・ドイツ、ヒトラーが行ったユダヤ人排斥の人種差別に勇気を持って立ち向かった。1933年以降はドイツ国内での演奏会をすべて拒否した。この録音は、ナチスを逃れアメリカに亡命する前の録音。屈辱より自由を求めたブッシュが娘婿ゼルキン(1903-1991)と共演したヴァイオリン・ソナタ。ブッシュ46歳、ゼルキン34歳、ほとばしる生命力、二人の魅力を余すところなく伝えている。
8-13

ヴァイオリン・ソナタ第40番変ロ長調 K.454

Violin Sonata No.40 in B flat major, K.454

1948年
チューリッヒ録音
ゲオルク・クーレンカンプ(vn)
ゲオルク・ショルティ(p)
Sir Georg Kulenkampff(vn)
Sir Georg Solti(p)
クーレンカンプのヴァイオリンもいいが、ここでの聴きものはなんといってもあのゲオルク・ショルティ(1912-1997)の弾くピアノ。後に大指揮者となるショルティ。彼がこんなにピアノが上手く、その上優しく、美しい音を奏でるとは。ショルティ再発見。これは聴いてみなければわからない。
14-18

ヴァイオリン・ソナタ第34番変ロ長調 K.378(317d)

Violin Sonata No.34 in B flat major, K.378
(317d)

1936年
パリ録音
カール・フレッシュ(vn)
フェリックス・ダイク(p)
Carl Flesch(vn)
Felix Dyck(p)
カール・フレッシュは、ヨアヒムやアウアー同様ユダヤ系ハンガリー人。名ヴァイオリニストであると同時に、的確な指導をした名教師としての評判が高く、教え子はジネット・ヌヴー、ヘンリク・シェリング、イヴリー・ギトリス、シモン・ゴールドベルクなど枚挙に暇がない。ここでは艶のある音色、美しいレガート奏法などヴァイオリニストとしてのカール・フレッシュの弾きぶりが堪能できる。
19-22

ヴァイオリン・ソナタ第24番ハ長調 K.296

Violin Sonata No.24 in C major, K.296

1939年
ニューヨーク録音
ナタン・ミルシテイン(vn)
アルトゥール・バルサム(p)
Nathan Milstein(vn)
Artur Balsam(p)
ミルシテインは84歳まで現役で活躍し、60歳を過ぎてからも、彼の音色はいっそうの輝きを増した。ヴァイオリニストとしては異例の長いキャリアを保ち、20世紀のほとんどを第一線で活躍した。あのクライスラーがミルシテインのことを「理想のヴァイオリニスト」といったという。ピアノのバルサム(1906-1994)は、ポーランド生まれ。彼もまたナチスを逃れアメリカに移住した。

CD-9 ヴァイオリン・ソナタ集-2VIOLIN SONATAS WITH VIRTUOSO VIOLINISTS-2

作品名 録音 演奏 ガイド
1-5

ヴァイオリン・ソナタ第42番イ長調 K.526

Violin Sonata No.42 in A major, K.526

1933年
パリ録音
ユーディ・メニューイン(vn)
ヘフツィバー・メニューイン(p)
Sir Yehudi Menuhin(vn)
Hephzibah Menuhin(p)
神童と言われたユーディ・メニューイン17歳、妹ヘフツィバー13歳。妹のピアノは元気はつらつ。若さにあふれた、みずみずしいメニューイン兄妹の共演を聴くことができる。これもSPレコードに録音が残されていたからこそできる楽しみである。数あるメニューインの演奏の中でも、これをベスト1と呼ぶことを躊躇しない。
6-11

ヴァイオリン・ソナタ第40番変ロ長調 K.454

Violin Sonata No.40 in B flat major, K.454

1936年
ニューヨーク録音
ヤッシャ・ハイフェッツ(vn)
エマヌエル・ベイ(p)
Jascha Heifetz(vn)
Emanuel Bay(p)
ハイフェッツは1901年リトアニア生まれ。1916年16歳のときに革命を逃れ一家はアメリカに移住。ハイフェッツの優れた演奏は壮年期を経て引退するまで世界最高の技量と評判。「一晩のコンサートに一度くらいは音をはずせばいいのに」と言われたほどの完璧な技巧を持つハイフェッツ。理に従えば角が立つ、情に竿させば流されるとはいうが、情に流されなかった完璧な技巧は理知の輝きを放っている。
12-16

ヴァイオリン・ソナタ第30番ニ長調 K.306 (300l)

Violin Sonata No.30 in D major, K.306
(300l)

1950年
ブリュッセル録音
カルロ・ファン・ネステ(vn)
ナウム・スルズニー(p)
Carlo van Neste(vn)
Naum Sluszny(p)
ファン・ネステ(1914-1992)はベルギーのブリュッセル王立音楽院出身。ジョルジュ・エネスコに師事した。同じベルギーの生んだ大ヴァイオリニスト、アルチュール・グリュミオーの先輩にあたる。ナウム・スルズニー(1914-1979)はシュテファン・アスケナーゼに師事。第二次世界大戦の終結後、ベルギーでの録音。さすがにフランコ・ベルギー楽派の伝統が息づいている。K.306の世界初録音である。
17-21

ヴァイオリン・ソナタ第36番変ホ長調 K.380 (374f)

Violin Sonata No.36 in E flat major, K.380
(374f)

1941年
コペンハーゲン録音
エールリング・ブロッホ(vn)
ホルゲル・ルンド=クリスチャンセン(p)
Erling Bloch(vn)
Holgel Lund-Christiansen(p)
エールリング・ブロッホ (1904-1992)はデンマークのヴァイオリニスト。 第二次世界大戦の最中の録音。録音された1941年はモーツァルト没後150年にあたる。

CD-10 ヴァイオリン・ソナタ集-3VIOLIN SONATAS WITH VIRTUOSO VIOLINISTS-3

作品名 録音 演奏 ガイド
1-4

ヴァイオリン・ソナタ第35番ト長調 K.379 (373a)

Violin Sonata No.35 in G major, K.379
(373a)

1935年
ロンドン録音
リリー・クラウス(p)
シモン・ゴールドベルク(vn)
Lili Kraus(p)
Szymon Goldberg(vn)
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタと言えば、戦前はリリー・クラウス/ゴールドベルク盤が圧倒的な人気を博していた。ここではゴールドベルクのヴァイオリンもさることながら、リリー・クラウス(1903-1986)の躍動感に満ち、しなやかに歌うピアノが素晴らしい。なお、この録音から5年後、リリー・クラウスとゴールドベルクは1942年のインドネシアのジャワで公演中、旧日本軍により拘束され1945年までジャワ島で抑留生活を強いられた経歴を持つ。しかしながら、戦後リリー・クラウスは何度も来日し、ゴールドベルクは晩年の1990年から亡くなる1993年まで、新日本フィルの指揮者に就任。親日家の彼が亡くなったのは、富山県立山のホテルであった。
5

ヴァイオリン・ソナタ第39番ハ長調 K.404 (385d)(未完)アンダンテ—アレグロ

Violin Sonata No.39 in C major, K.404
(385d) unfinished Andante-Allegro

1937年
ロンドン録音
同上 同上
6-11

ヴァイオリン・ソナタ第41番変ホ長調 K.481

Violin Sonata No.41 in E flat major, K.481

1936年
ロンドン録音
同上 同上
12-21

ヴァイオリン、ヴィオラとチェロのためのディヴェルティメント変ホ長調 K.563

Divertimento in E flat major, K.563
for Violin, Viola and Cello

1935年
パリ録音
パスキエ三重奏団
ジャン・パスキエ(vn)
ピエール・パスキエ(va)
エティエンヌ・パスキエ(vc)
Pasquier Trio
Jean Pasquier(vn)
Pierre Pasquier(va)
Étienne Pasquier(vc)
1927年パスキエ三兄弟によって結成された弦楽三重奏団。数多くのフランスの作曲家がこの三重奏団のために作品を書いた。1974年に解散したが、1970年にピエールの二人の息子たちによって新パスキエ三重奏団が出来た。この録音はSP時代に日本コロムビアから発売されていて、けだし名演と評価が高かった。

CD-11 弦楽四重奏曲集-1STRING QUARTETS-1

作品名 録音 演奏 ガイド
1-6

弦楽四重奏曲第14番ト長調 K.387

String Quartet No.14 in G major, K.387

1938年
パリ録音
カルヴェ弦楽四重奏団
ジョゼフ・カルヴェ(vn1)
ダニエル・ギレヴィッチ(vn2)
レオン・パスカル(va)
ポール・マ(vc)
Calvet String Quartet
Joseph Calvet(vn1)
Daniel Guilevitch(Vn2)
Léon Pascal(va) Paul Mas(vc)
フランス生まれのジョゼフ・カルヴェ(1897-1984)は、トゥールーズ音楽院で学び、1914年にプルミエ・プリを獲得、その後パリ音楽院でギョーム・レミィに師事、1919年にプルミエ・プリを贈られた。その年に四重奏団を結成したが、1921年までは活動が軌道に乗らなかった。メンバーが最終的に固まったのは1928年になってからだった。次に登場するレナー弦楽四重奏団とは対照的な、現代風な響きを聴かせる。
7-13

弦楽四重奏曲第15番ニ短調 K.421 (417b)

String Quartet No.15 in D minor, K.421
(417b)

1926年
ロンドン録音
レナー弦楽四重奏団
イェノ・レナー(vn1)
ヨーゼフ・スミロヴィッツ(vn2)
シャーンドル・ロート(va)
イムレ・ハルトマン(vc)
Léner String Quartet
Jenö Léner(vn2)
Joseph Smilovitz(vn1)
Sándor Roth(va)
Imre Hartman(vc)
イェノ・レナー(1894-1948)はじめ全員がブダペスト音楽院の出身。1918年のハンガリー革命を契機に弦楽四重奏団を結成した。デビュー前の2年間、彼らは田舎にこもって、1日に12時間も練習に励み、1920年にウィーンでデビュー。たまたま、ウィーンでの彼らの演奏を聴いたモーリス・ラヴェルは、彼らをパリに招き、パリ公演はセンセーショナルな成功を収めた。その後1922年ロンドン、1929年にはアメリカにデビューを果たす。戦前日本でもブッシュ弦楽四重奏団、カペー弦楽四重奏団と並び称された。彼らの音色はハンガリー出身のヴァイオリニストに共通する、心にしみる、悲しみを内包している。
14-19

弦楽四重奏曲第17番変ロ長調 K.458「狩り」

String Quartet No.17 in B flat major, K.458
"The Hunt"

1928年
ロンドン録音
同上 同上

CD-12 弦楽四重奏曲集-2STRING QUARTETS-2

作品名 録音 演奏 ガイド
1-9

弦楽四重奏曲第19番ハ長調 K.465「不協和音」

String Quartet No.19 in C major, K.465
"Dissonant"

1928年
パリ録音
カペー弦楽四重奏団
リュシアン・カペー(vn1)
モーリス・エヴィット(vn2)
アンリ・ブノワ(va)
カミーユ・ドローベル(vc)
Capet String Quartet
Lucien Capet(vn1)
Maurice Hewitt(vn2)
Henri Benoît(va)
Camille Delobelle(vc)
リュシアン・カペー(1873-1928)は医師の誤診による腹膜炎で1928年12月18日に急逝した。享年55歳。これはカペーが亡くなる2ヶ月前に録音されたものだ。カペーはパリ音楽院でJ.P.モーラン(1822-1894)に師事し1893年に1等賞を得て、その年に弦楽四重奏団を組織した。録音時のメンバーは、1918年から不動。1920年頃から毎年ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の連続演奏会をパリで開催していた。カペーは1928年4月にフランス・コロンビアに録音を始めた。そしてその年の10月までの6ヶ月間に弦楽四重奏曲11曲とピアノ五重奏曲1曲の録音をした。SP盤10インチが7枚、12インチが44枚。まるでカペーが自らの死を予期したようなハイペースの録音だった。80年前の録音ながら、史上最高と言っても過言ではないこの稀有な四重奏団の音色が見事に再現されている。
10-17

弦楽四重奏曲第16番変ホ長調 K.428(421b)

String Quartet No.16 in E flat major, K.428
(421b)

1942年
ニューヨーク録音
ブッシュ弦楽四重奏団
アドルフ・ブッシュ(vn1)
ゲスタ・アンドレアソン(vn2)
カール・ドクトル(va)
ヘルマン・ブッシュ(vc)
Busch String Quartet
Adolf Busch(vn1)
Gösta Andreasson(vn2)
Karl Doktor(va)
Herman Busch(vc)
ブッシュ弦楽四重奏団はリーダーのアドルフ・ブッシュ(1891-1952)によって1919年に組織された。当時ブッシュはベルリン高等音楽院の教授の地位にあった。ブッシュ四重奏団は何回かのメンバーの交代があったが1930年にこの録音のメンバーになった。チェロのヘルマン・ブッシュ(1897-1975)はアドルフの実弟。第二次世界大戦まっただ中、亡命先のアメリカでの録音。
18-24

弦楽四重奏曲第22番変ロ長調 K.589「プロシャ王」第2番

String Quartet No.22 in B flat major, K.589
"Prussian Quartet No.2"

1949年
パリ録音
パスカル弦楽四重奏団
ジャック・デュモン(vn1)
モーリス・クリュ(vn2)
レオン・パスカル(va)
ロベール・サル(vc)
Pascal String Quartet
Jacques Dumont(vn1)
Maurice Crut(vn2)
Léon Pascal(va)
Robert Salles(vc)
パスカル弦楽四重奏団は、第二次世界大戦中1941年にカルヴェ弦楽四重奏団のヴィオラ奏者だったレオン・パスカル(1899-1969)によって南仏マルセイユで結成された。ドイツ占領下のヴィシー政権の影響が直接及ばない地を選んだものと想像する。フランス国立放送管弦楽団に所属してからORTF弦楽四重奏団と呼ばれた時期もある。第1ヴァイオリンのジャック・デュモンはパリ音楽院でジュール・ブーシュリに師事し、1934年に1等賞を得た。1973年デュモンが引退して解散した。フランスの弦楽四重奏団で初めてベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲録音をした。

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