笹井一個作品集『ガソリン』特設サイト


笹井一個×庄子結香(カレラ)対談vol.1

対談 vol.1

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本日は、『ガソリン』のアートディレクターを務められた庄子さんと一緒に、デザインや制作面から『ガソリン』についてお話ししたいと思います。この対談は、「『ガソリン』のお話は、ぜひ庄子さんを交えて」という笹井さんの発案で行われました!
どうぞよろしくお願いします。(進行:ガソリン担当編集)
庄子
よろしくお願いします。
笹井
お願いします〜。
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はじめに制作行程を振り返っていきたいと思います。最初の打ち合わせで、笹井さんにどんな本にしたいかイメージをお訊きしたんですが、その時におっしゃっていたことは覚えていますか?
笹井
えっと…なんでしたっけ……(笑)。「雑多な感じ」ということを何度も言っていたなぁと思います。参考にしてもらおうと思って、色々な印刷が入っている洋書っぽい雰囲気のムック本を持っていったんですよね。打ち合わせでそれを見てもらいながら、こんなテイストにしたいと話して。
庄子
「東欧っぽいイメージ」というお話もありましたよね。あまり綺麗すぎない、ザラッとした雰囲気が良いと。
笹井
そうですね。ペカペカした質感とザラッとした質感、両方入っている本が良いと言ったかな。「東欧っぽいイメージ」というのも、いわゆる東欧大好きというテイストではなくて、プロダクトっぽい要素が混ざっていると良いなと思ったんです。
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実際に『ガソリン』では、コート紙というツルッとした質感の紙や、漫画雑誌で使われているザラッとした紙なども混ざっていますね。そういった笹井さんのリクエストを受けつつ、庄子さんはどのようにデザインに取りかかったのでしょうか。
庄子
最初は、笹井さんのこれまでの絵素材を全部載せよう、という企画で進行していたので、とにかく膨大な絵をどうやって仕分けていくか、ということでした。
笹井
そうですよね。最初は全部載ると良いなぁと話していて。
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はじめに笹井さんの手元にある絵のデータを送ってもらったんですよね。凄い量でしたが、どのくらいあったんでしょう。
庄子
たぶん、1000枚くらいはあったんじゃないかと……。ざっくりですけど。
笹井
うーん…、私もちょっと分からない……(笑)。
庄子
けっこう細かいイラストもたくさんありましたよね。
笹井
web用のらくがきも混ざっていたり。
庄子
解像度の低い画像もあったんですよね。色々なタッチで描かれた絵があったので、まずは画集の中にどう入れていこうか章立てを考えながら、ざっくりとジャンルを分けていきました。最初は、どういう絵があるのか把握するために、全ての絵を小さくプリントアウトして並べていったんです。カラー、モノクロ、ファンタジー、シリーズものなどを分けていきました。

全ての絵を把握するために出力したプリント

素材量の多さが見てとれる。

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パソコン上で見るよりも、紙で見る方が作業しやすいんでしょうか?
庄子
そうですね。作品点数が多くてパソコンだと全体を把握出来なかったので、手で触れる状態にして作業しました。そして、テーマなどで章立てしたグループを作って、笹井さんにも確認していただきました。
笹井
打ち合わせの時に、カレラさん(の事務所)の壁に出力した小さいサムネイルが貼ってあって。それをみんなで見ながら収録順を考えたり、カットする部分を決めましたよね。その光景はすごく覚えています。

打ち合わせ時の写真

壁に見開きページごとの小さいサムネイルが貼られている。
これを見ながらイラストの収録順などを大検討!

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先ほどおっしゃっていた『ガソリン』の章立てについても、庄子さんから説明していただけますか? 
庄子
絵をテーマごとのまとまりに分けていくつかの章にしているんですが、読者の方がパッと分かるコンテンツにしていないので裏設定みたいな感じです。最初のページから順に流れを話していくと、まずは「巻頭グラビア」が入っていて、ここはダイジェストのようなイメージで印象的な絵を集めています。その後に、「ループ絵」「少年」「女の子」「和風」「セーラー服」「ダーク」「サーカス」「都市」「コメディ」「漫画」「フィナーレ」という章が入っています。おおまかにあげると、そういった章が設定されていますが、本を見ていただく時は手に取った人が好きなように区切りを見つけて読んでくれると良いなぁと思います。
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そうですね。それと、この本は「雑多な感じ」というテーマがありますが、詰め込み過ぎると圧迫感が出てしまって、見ていて一息つけるページが欲しいという話にもなりました。それで、章の区切りを利用して、全体の流れの中にメリハリを作っていこうと。
庄子
そうですね。「セーラー服」の章は、笹井さんのアイディアで、章が切り替わるページに大きな空白スペースを作っていて。画面の中に抜きを作ることで、章の切り替わりと合わせて一息入れられるようにしています。

「セーラー服」の章 最終ページ

女の子のループ絵を右横と下側に2つ収録。中央に空間を残して抜きを作っている。
『鏡姉妹の飛ぶ教室』(講談社)

笹井
自分の絵なんだけど、最初からめくって300ページ以上見ているとあまりにも疲れてきて(笑)。それで、少し抜きを作ろうという話になったんですよね。買ってくれた人はこの本をどうやって見てるのかなぁ…。
庄子
1ページ目から見てもらうことを前提に作っていますが、読んでいて迷子になる感じは面白いなぁと思います。「あの絵、どこだっけ?」と探してみても、なかなか辿り着けなかったり(笑)。
笹井
(笑)。
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「迷宮的」という言葉も制作中のキーワードになっていましたね。迷子になった時には、巻末の索引も併用してみて欲しいです。
笹井
ノンブル(※各ページに記してあるページ数。絵を断ち切りで掲載しているページはノンブルが付いていない)が思ったよりも入っているので、索引をちゃんと入れて良かったなぁと思います。私の周りは出典を確認するタイプの人が多いので、細かい部分を調べたい人が辿れるようにしたいと思っていたので。