笹井一個作品集『ガソリン』特設サイト


笹井一個×庄子結香(カレラ)対談vol.5

対談 vol.5

庄子
笹井さんは、今と昔の絵柄が作品集の中でミックスされていることは気にならないですか?
笹井
すごく面白いです。一気に描いた絵を集めてもこういった幅は出ないと思います。他の方の作品集を見ていても感じることなんですが、一冊目ってまだ作風が落ち着いていないことが多いから、色々な絵が見られて面白いですよね。私の場合は大概落ち着かないんですけど……(笑)。
庄子
一貫した作風で描かれる人もいますし、変化し続ける人もいますよね。笹井さんの作品は、絵の中で色々と試されていて魅力的だなぁと思っていました。私もわりと試したくなるタイプなので……(笑)。
笹井
庄子さんは同じ星の人だなと思います(笑)。
庄子
「乱暴に扱われても大丈夫な造本にしたい」とおっしゃっていたあたりとか、近い感覚でしたね(笑)。
笹井
そうですね。デザインに関しても、「もっと乱暴に扱ってください!」とお伝えしていて(笑)。
――――――
著者側から、そういった言葉はあまり出ないと思いますよ(笑)。
庄子
でも、笹井さんからそう言ってもらっていましたけど、私もどこまでやっていいのか迷う部分があって。制作中に突然「真面目にしなきゃ……」と気持ちが揺れることもありました。「この本は遊んでも大丈夫…」と自分に言い聞かせながら作っていた気がします。
笹井
どちらかと言うと、素材をそのまま載せてしまう方がデザインとしては乱暴な気がしますし、考えて再構成してもらえるのはすごく嬉しいです。普通は、全然違う絵を重ねてデザインするって、やってもらえないので。造本も、本体にPP(※ポリプロピレンフィルム。本をフィルムでコーティングしているので表面に光沢が出る)がかかっているから、水をこぼしても大丈夫だし(笑)。乱暴に扱っても大丈夫な本になったなぁと思います。それに最初にイメージしたより読みやすい本になりましたよね。けっこう軽いし。これを軽いと言うのは間違っているかもしれないけど……(笑)。
庄子
たぶん全て四色で刷っていると、もう少しズシッと重くなっていたと思うんですけど、二色刷りのページが入っているぶん軽くなっているんでしょうね。
笹井
普段意識しないけど、意外とインクの重さもあるんですね。ソフトカバーなのも読みやすい。中身がずっしりした分、外が軽い感じになって良かったです。造本も、見開きがパカッと真ん中まで開く仕様になっていて見やすいですし。
庄子
今、こうやって本を見ていると、しみじみと楽しかったなぁと思うんですけど……制作中は大変で終わらないんじゃないかと(苦笑)。
笹井
やっぱり物量がすごいですよね。
庄子
そうですね。私が関わった本の中でもページ数や素材量が格段に多くて、制作期間の長い本でした。普段100ページ前後の構成だったら頭の中に入るんですが、この本(※320ページ)は頭の中で整理仕切れない部分もあって……。
笹井
三冊分くらいの内容量ですね。
庄子
でも色々な冒険をさせてもらえて、デザインの醍醐味を味わえる本でした。制作中、笹井さんが自費出版で作っていらっしゃる本も拝見させていただいて、自費出版の世界にも興味が湧きました。『ガソリン』も、お仕事だからとお行儀よくデザインするのではなく、自費出版の良いところも入った本にしたいと思っていて。商業だと、どうしても色々な制約が出てきますけど、「商業だから」「自費出版だから」という違いをなるべく少なくしたいと考えていました。
笹井
庄子さんのデザインは、遊んでいるけどきちんと商業の本になっていて。見る人が置いてけぼりにならないのがすごいなぁと思います。私はわりと置いてけぼりにしちゃうので……(笑)。
庄子
それにもすごく惹かれるんですよ! 笹井さんの突き抜けているところを見て刺激を受けました。
笹井
読者の人から、「繰り返し見ています」という感想をいただくことがあって、嬉しいなぁと思います。密度があるし、編集意図とか見ていて読み取れるものが多い本なのかなと感じます。
庄子
そうですね。隠しメッセージみたいなものがいっぱい入っていると思います。自分でも忘れているメッセージがあるんじゃないかと(笑)。
笹井
ありますね(笑)。一気に作るとこういう本にはならないから、手早く作ったのではない有り難みがあるなぁと感じます。贅沢な本でしたね。
庄子
そうですね。
笹井
今度は、庄子さんの自費出版物も見てみたいです。
庄子
挑戦してみたいですね。
笹井
ぜひ! 楽しみにしています!
庄子
……またプレッシャーが(笑)。