Interview

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スペシャル座談会 堤大介 寺田克也 上杉忠弘 丹地陽子

スケッチトラベル企画者の堤大介と、参加作家である寺田克也、上杉忠弘、丹地陽子のスペシャル座談会! 全三回に分けてお送りしていきます。

Vol.3
チャリティプロジェクトとしての「スケッチトラベル」

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ところで、スケッチトラベルはチャリティプロジェクトでもあるわけですが、それは最初の企画段階から考えていたんですか?
こういうプロジェクトをやるなら、誰かが得してしまうような仕組みだと、うまく行かないだろうと最初から考えていました。例えば僕がこのスケッチブックを個人的な宝物にしてしまうとか…。そういう風に、誰かが得するためのものにはしたくなかった。「ただ楽しんで描く」というだけのものにしたかったからです。だから、スケッチブックは一冊が出来上がった瞬間に、オークションにかけて手放す。そして、その収益は僕らのうちの誰かの懐に入るのではなく、チャリティに回す。その形が一番良いだろうと思いました。なので、最初は形として丁度良いと思っただけで、何か、誰かを助けたいとか、そういった大義があったわけではありませんでした。最後の最後まで、どのチャリティ団体に寄付するかは決めていませんでしたしね。
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最終的には“ルーム・トゥ・リード”への寄付という事になったわけですが、その理由は?
今言ったように、途中まではチャリティとして何か大きな目的意識を持っていたわけではありませんでしたが、やっていくうちに、少しずつ変わっていきました。絵が刻まれていくごとに、どんどんスケッチブックの価値の重みは増していって、これは無責任ではいられない、と。これだけの価値ある一冊から生まれるオークションの収益なのだから、しっかり考えて、意味のあるチャリティ活動に繋げる必要があると考えました。それで、何か形として残せるものが良いと思い、リサーチをしたんです。ただ金額だけを提示されるよりも、形になるものの方が、続けていくモチベーションになるし、人にもそれを伝えられると思って。次に繋がる、というのが重要だと思いました。ルーム・トゥ・リードは、実現できそうなレベルの金額で図書館が建つ。そしてさらに、その土地のアーティストが現地の言葉で描いた、絵本の出版を支援する。これは非常に素晴らしいと思ったんです。例えばラオスという国には、海外製のものはあってもその国の絵本というのは存在しなかった。それはとても悲しい事ですよね。僕らは皆、子供の頃に自分の国の言葉で描かれた素敵な絵本をたくさん読んで育ってきたのに、その国の子供達はその体験が出来ないんですから。そういった事を知って、ルーム・トゥ・リードに決めました。結果的に、ラオス、カンボジア、ベトナム、ネパール、スリランカの五カ国に図書館一軒ずつと、絵本を五冊。そういう素晴らしい結果になって、本当に意義深いプロジェクトになったと思います。
上杉
絵本をつくれるというのは、とても良いですよね。そういった国はまだまだ文字が読めない人も多いですから、文字が読めなくても楽しめる絵本は、大切なものだと思います。
寺田
そうだね。それで文字を覚えていく事にも繋がるわけだし。
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これからも本の売上の一部がルーム・トゥ・リードへ寄付されていきますから、まだまだ活動を続けていけるのも素晴らしいですよね。では最後になりますが、皆さんこのプロジェクトに参加してみて、チャリティの事も含め、どういう事を思ったか教えてください。
上杉
手渡しで絵が渡っていく、という企画自体を面白いと思って参加したので、最初のうちは、チャリティにさほど興味はありませんでした。むしろ絵描きがそういったチャリティをするという事に、懐疑的な部分もあったりして…。でも、そのあと日本で大きな震災が起こり、そこでやはり、絵描きには何が出来るんだろうと考えて、自分のプリントを売って売り上げを寄付したりしたんです。スケッチトラベルがなければ、そういう行動は起こさなかったかもしれない。そのきっかけをくれたプロジェクトでした。
丹地
私は絵の話なんですが、最近めっきり紙に描くという事が減っていて…。そんな時に、このスケッチトラベルで紙に鉛筆で描くという事をやって、とても楽しかったんです。もっともっと手描きで絵をちゃんと描きたいし、描けるようになりたいなと思いましたね。手描きの絵の良さ、というのを改めて感じるきっかけになりました。
寺田
オレは、今の二人の話のどっちも感想として持っていますね。自分もデジタルで絵を描く事が多くなっていて、でも、そうなってきたからこそ、こういうプロジェクトで改めてアナログの絵の力を確認しました。こういう働きもするんだなって。あと、震災以降チャリティの活動を少しだけですがやってて、そういう事に対するハードルがスケッチトラベルへの参加によって、ぐっと下げられた気はします。さらに言えば、皆で絵を描いたり展示をしたり、という事に面白みを感じるようになったきっかけにもなっているかな。そういう新しい意識をもらったという意味で、このプロジェクトには本当に感謝しています。
丹地
アメリカの方もヨーロッパの方も、チャリティに対する意識が全然ちがいますよね。もっと気軽にやるものだと思っている。当たり前のようにやっているというか…。そういう意識の持ち方は新鮮でした。日本だと、どうしても気負ってしまって、なかなか動き出せなかったりしますけどね。あと、ただお金を寄付するだけでなく、図書館という形にした、というのはとても良かったと思います。
寺田
一番すてきな形だよね。
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では、企画を主催した堤さんはどうでしたか?
長い期間をかけたプロジェクトで、この五年間にはいろいろな出来事がありました。そして、たくさんの人と人との繋がりが出来ました。日本で震災が起こった後、僕は小規模ではありますがチャリティプロジェクトを立ち上げたのですが、その時にスケッチトラベルを通じて出来たその繋がりが、大きな力になったのを覚えています。参加した多くの作家の方達が、すぐさま力を貸してくれたんです。こうやって、活動をともに出来るコミュニティが出来た、というのは財産だなと思いましたね。チャリティに限らず、作家同士が集って出来る事はまだまだあると思います。なので、この一大プロジェクトを終えて感無量、という事ではなく、今はこれからもっと色々な事が出来るかもしれない、という楽しみな気持ちです。
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なるほど。スケッチトラベルも今後、展覧会の予定などがありますし、楽しみです。
本日はどうもありがとうございました。