田島昭宇 インタビュー4

田島昭宇の絵的な側面をクローズアップしたインタビュー。カラーイラストの描き方や、チーフとなる人物像について語っていただいた。「季刊エス33号」に収録されたインタビューの増補改訂版で、画集の巻末に収録される文章です。

画集『ロザリオイエティ』について

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なるほど。では最後に本書『ロザリオイエティ』のことも伺いたいと思います。ラフがメインに収録される体裁になりましたが、こういう本を出したいと思うのはなぜですか?
田島
やっぱり普段見られないじゃないですか。たまに漫画家の人が原稿を落としたりして、下描きで載っている時とか、何かこう…嬉しくなかったっすか? 貴重だなって…。俺もこの間、ついにやっちゃったんすけど、あれはもう雑誌のみですよ。単行本には完成が載るわけだから。俺は過程を見られるのが嬉しかったんですよね。ラフの線の良さっていうのは、見ていて気持ち良いし。
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整えられる前の、最初の感じですね?
田島
俺も昔は、ラフって他人に見せるものじゃなくて、「単なる過程のもの」だと思っていたんです。「完成形だけで良い」って。でも、ちょっと前から考え方が変わって、ラフもすごく良いなあと思って。これも残したいという考えに変わったんですね。
――――――
何かきっかけがあったんですか?
田島
自分のラフが好きになってきたというのが大きいかもしれないっすね。昔は、自分のラフとか嫌いだったんです。
――――――
ラフは私たちも見ていると楽しいですし、「勢い」というか、「生っぽい」何かがありますよね。頭の中にあった状態に一番近いというか。そういえば田島さんは、行程としては完成までに何枚くらい描くんですか?
田島
メモ帳くらいの小さいサイズに最初のラフを描いて、次に「本ラフ」があって、それにペン入れをしています。メモ帳サイズのラフの段階で何枚か描いたりしますね。構図を変えてみたりとか。で、大きいサイズの本ラフは、決めたラフを拡大してトレースしたものです。そこに「肉づけ」していくっていうか。で、俺が面白いと思うのは最初のラフですね。何か…楽しいな、っていう。
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「アイディアが形になった瞬間」ということですかね。まだぼやっとしたものが、何となく形になったという。「ラフの時の方が良かったのに」っていう場合もありますか?
田島
ありますね、常に。ペンを入れると…こうなっちゃうんだよね、っていう感じで。
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その意味でもラフには、固有の見応えがあるんですね。そして『ロザリオイエティ』の装丁の話ですが、今回は田島さんが昔から考えていたアイディアで造本しています。表紙はベルベットみたいに柔らかい布地で、本の天地と側面には金箔を塗って。
田島
最初は「聖書っぽく」とか言っていたじゃないですか。そんなのが良いなあと思って。あと、トレヴィル(八〇年代に美術書を多く出していた出版社。現在はエディシオントレヴィルとして復活している)の本が大好きで、ああいう本を作りてえなあ…っていう。
――――――
あと、外装は豪華なのですが、中の紙は粗めのラフな方が良いって言っていましたよね?
田島
ラフっぽいものが入る画集ですからね。昔の本って、そういうギャップがあったような気がするんですけどね。
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完全に「豪華本」ではない、ハズシがある感じですね。タイトルの『ロザリオイエティ』という言葉はどこから出たんですか?
田島
それはもう、あれですよ。前に出した本が『ゴリラキック』だったんで、「ちょっと進歩したかな」っていうつもりで、「イエティ」! ちょっと人間に近づいたぞ! って感じで(笑)。
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なるほど。あとは仕事場などの制作現場写真や原画のクローズアップ、カラーイラストも少し入る本になりました。作家のスタジオを見る感覚のイメージですね。田島さんとしては、自分もラフ絵を見るのが好きだから、見る人にも楽しんでもらいたいという感じですよね。
田島
そうですね、見て欲しいですね。その段階の絵にしかない何かがあるんです。漫画になったり、イラストになったら見れない線っすね。結構良い感じのがあったりするんで、よろしくお願いします。
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この本も、ラフをいろいろ見て探してみると、ボツ案もあって面白いと思います。田島さん、お話ありがとうございました。

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