東京散歩 Tokyo Sanpo

FLORENT CHAVOUET 『おじさん図鑑』のなかむらるみさんもびっくり!東京をこんなによく見てくれてありがとうございます Traduit par Tomoko Yamamoto et Miyu Ishida

About 東京散歩について

作・絵
フロラン・シャヴエ
山本知子 石田みゆ
ブックデザイン
中村至男
本文レタリング
小辻雅史
定価
2,000円(税込)
仕様
B5 216ページ
発売
飛鳥新社

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東京散歩 Tokyo Sanpo FLORENT CHAVOUET

Cet ouvrage a bénéficié du soutien des Programmes d’aide à la publication de l’Institut Français/Ministère français des affaires étrangères.

Profile プロフィール

作・絵

フロラン・シャヴエ(Florent Chavouet)

1980年生まれ。『東京散歩』が初の著作。第二作目の『Manab Shima』は、瀬戸内海に浮かぶ岡山県の真鍋島に滞在して描き上げた。
翻訳者

山本 知子(やまもと・ともこ)

早稲田大学政治経済学部卒。東京生まれ、横浜育ち、そしてまた昨年から東京に住むフランス語翻訳家。訳書に「星々の蝶」(NHK出版)、「タラ・ダンカン・シリーズ」(メディア・ファクトリー)、「中国の血」(文藝春秋)など多数。

石田 みゆ(いしだ・みゆ)

法政大学キャリアデザイン学部卒。横浜生まれ。翻訳会社、出版社勤務などを経て、現在は埼玉県のお寺に嫁ぎ、フランス語の翻訳に従事。本書が初の翻訳書となる。
  • 絵を描いている著者1
  • 絵を描いている著者2
三平

Dialogue 対談

対談 フロラン・シャヴエ×なかむらるみ 東京とおじさんとマグロ味

  • シャヴエさんとなかむらさん シャヴエさんとなかむらさん

    『東京散歩』と『おじさん図鑑』(小学館刊)。
    片や「東京」を、片や「おじさん」を、という風に観察対象は異なるが、それを見つめる視線が愛情と距離感との絶妙なバランスによって成り立っているという点では、同じ空気感を持った二冊の本です。
    その二冊の著者、フロラン・シャヴエさんとなかむらるみさんが今回初めて顔を合わせ、ぽつりぽつりとおしゃべりをしてくれました。

  • 「自分がおもしろいと思うものを探したい」

    ―――――――
    おふたりの作品を拝見していて、視線の質と言いますか、対象を見つけるその姿勢が共通しているように感じ、なかむらさんには『東京散歩』の解説を書いていただきました。ご自身ではそのあたりについていかがお感じですか?
    シャヴエ
    観察者として、ちょっと距離を置いて見ているかんじですよね。
    なかむら
    それは同じかもしれない。世代が同じだからなのかな。流行りのものもあまり見たくはないし。それとはちょっと違うものを見たい。
    シャヴエ
    そうですね。最先端のおしゃれな地域よりも、ちょっと下町っぽい方が好きだし。
    なかむら
    自分がおもしろいと思うものを探したいというのがあるかな。
    シャヴエ
    なかむらさんは、いつも楽しいでしょう? おじさんはそこらじゅうにいるから(笑)。子どもの頃からずっと観察してるんですか?
    なかむら
    そうかもしれない。
    シャヴエ
    おじさんを描こうと思ったのはいつですか?
    なかむら
    描きはじめたのは大学生の頃なんですけど、きっかけは高校のときにいた美術のおじさんの先生。その先生の個展に行くと、ギャラリーが閉まる頃に、絵描きのおじさんがいっぱい集まってくるんですね。そこで、缶ビールと乾き物の宴会が始まって(笑)。すごい楽しそうで。ギャラリーのオーナーのおじさんはお金持ちそうなんだけど、警備員をしてる貧乏そうなおじさんもいて、それでもお互いを褒め合っていたんですね(笑)。
    高校生ってだいたい、モテそうなチーム、ダメそうなチーム、教室の隅っこチームって分かれているじゃないですか。でもおじさんってみんないっしょに仲良くしているんだなと思って。
    シャヴエ
    おじさんにはそういうグループ分けがない。
    なかむら
    それで、いい大人に見えたんです(笑)。おじさんとの最初の出会いが良かったんでしょうね。
    シャヴエ
    自分が歳を取ったら、今度は若者を描いたりするんですか?
    なかむら
    まだわからないです(笑)。
    シャヴエ
    おばさんになったら、若者たちがグループに分かれている様子を描くとか(笑)。
    なかむら
    あるかもしれない。
    シャヴエ
    本の中のおじさんは、どういうふうに選んでいたんですか? 知らない人ですよね。
    なかむら
    インタビューした人以外は知らないおじさん。私は写真を撮らないと描けないので。
    シャヴエ
    そのまま描くんじゃなくて、パパラッチ(笑)。
    なかむら
    おじさんパパラッチしてました、ずっと。
    シャヴエ
    みんな東京ですか?
    なかむら
    東京と、大阪、名古屋ですかね。地方は、行く人に頼んで写真を撮ってきてもらったり。変な人になってきちゃった(笑)。
    ―――――――
    いいおじさんのいるのはどの町でした? 大阪でしょうか。
    なかむら
    そうですね。濃いおじさんがいますけど、でもやっぱり、東京は色んなところから来ているというのもあって。
    シャヴエ
    パリも同じです。都会には色んな人が来てるからヘンなおじさんも多い。
    なかむら
    パリ出身ですか?
    シャヴエ
    大学はパリでしたが、出身はクレルモン=フェラン。
    なかむら
    へー、わかんない(笑)。
    シャヴエ
    よく知ってるって言われたら逆にびっくりしました(笑)。タイヤとかガイドブックの会社ミシュランの本拠地なんです。
    なかむら
    田舎?都会?
    シャヴエ
    人口は15万人。日本の基準ではあまり大きくないのかな?
    なかむら
    わかんない(笑)。
  • 日本のおじさんおばさんはおもしろい

    シャヴエ
    なかむらさんは、東京の出身なんですか?
    なかむら
    新宿の落合。高校は高田馬場。この本は、私の移動範囲と似てたんです。自転車で行動してた地域が出て来るし、スーパーの稲毛屋(P62)とかよく知ってる。読んでて近いなって。
    シャヴエ
    すぐそばに住んでたんですよ。
    なかむら
    シャヴエさんがいた頃(2006年)もうろうろしてたかも(笑)。ずっとそこなんです。
    シャヴエ
    でもぼくはおじさんじゃないから(笑)。まだ髪の毛もあるし。
    なかむら
    フランスで「おじさん」という言葉はあるんですか?
    シャヴエ
    フランス語では無いかなあ。「おじいさん」はあるけど。
    なかむら
    へえー。
    シャヴエ
    でも「おじいさん」じゃちょっと違うでしょ?
    ―――――――
    年取ってるともかぎらないし。
    シャヴエ
    30歳のおじさんもいる。
    なかむら
    ずっとおじさんみたいな人もいる(笑)。
    ―――――――
    シャヴエさんが東京の路上でスケッチをしていたときには、おじさんやおばさんがどんどん話しかけてきてくれたみたいですね。若い人は話しかけてこないけど。フランス人のおじさんおばさんよりおもしろいっておっしゃってました。
    なかむら
    ほんとですか、へえ。
    シャヴエ
    日本のおじさんやおばさんのほうがいい感じ。
    なかむら
    へえ。日本語で喋りかけるの?
    シャヴエ
    向こうが日本語で声を掛けてくるので、ぼくは「ワカリマセン」とか「ハイ」とか言うんです。言葉がわかったふりで(笑)。それで、いっしょに呑むことになったり。真鍋島に行ったときも最初は全然日本語がわからないけど、おじいさんおばあさんと話して、ほんの少しだけ言葉を理解できるるようになると、だいたいこんなかんじのことを言っているのかなあって想像できるようになった。でも、わからなくてもいいんです。
    なかむら
    ふんふん。日本のおじさんは、相手がわかっていなくても気にしていないと思いますね(笑)。
    シャヴエ
    そうですね(笑)。反応さえしていれば。でも、ぼくと同世代の人たちはあまり見に来ないし、声を掛けてこなかった。カップルか2人以上のグループなら話しかけてくることもあったけど。ひとりはほとんどいなかった。
    なかむら
    引っ込み思案、消極的。私もたぶん言わないかもしれない……(笑)。
  • 風呂場の椅子は「マヌケ」?

    シャヴエさんとなかむらさん
    シャヴエ
    『おじさん図鑑』は日本語だからまだ全部読めてませんが、フランスで翻訳出版してもらいたいですね。
    なかむら
    お願いします。フランス語に(笑)。そういえば、台湾でもおじさんのことを「おじさん」って言うんですよね。日本の時代から残っているみたい。
    シャヴエ
    「おじさん」って言葉? 発音も同じ?
    なかむら
    そう、使い方も同じ。ちょっと優しいような、知らないおじさんの呼び方。
    シャヴエ
    いまはどんな仕事をしているんですか?
    なかむら
    海外版『おじさん図鑑』を作ってます。台湾へ取材にも行きました。
    ―――――――
    日本との違いはありましたか?
    なかむら
    濃いおじさんは、やっぱり日本より濃いかもしれない。ぱっと見は、大阪みたいにおばさんのほうが目立つ。だから、裏に濃いおじさんがいる(笑)。まだちょっとわからないです。取材中です。次に行きたいところとかある?(第二作の舞台になった)真鍋島ってどこですか?
    シャヴエ
    岡山県。おじさんおばさんがいっぱいいますよ。300人のうち250人が年配の人。
    なかむら
    (『真鍋島』を開いて眺めながら)すごいいっぱい描いてますね。
    シャヴエ
    ぜひなかむらさんも観に行って、たくさん描いてください。
    なかむら
    真鍋島の地図もついてるんですね。面白そう。文章をもうちょっと読みたいなって思いました。
    ―――――――
    文章もおもしろいですからね。
    なかむら
    日本と違う感じがして。
    ―――――――
    お風呂の椅子の話とか。
    なかむら
    あれ、おもしろかった。
    ―――――――
    日本人読者にはあれ、けっこうウケるんですよ(笑)。
    なかむら
    「マヌケな感じのする椅子」(P56)っていう。
    シャヴエ
    銭湯ではみんな気にせずその椅子に座っていて、ぼくひとりが立っていた(笑)。
    なかむら
    そんなに恥ずかしかったんだ(笑)。
    シャヴエ
    脚も伸ばせないし。(銭湯では正面に)鏡があったりして脚がつっかえるでしょ。
    なかむら
    うちはシャワーが低いから、座らないと頭が洗えない。でも、銭湯では立ってると怒られますよ、おじさんに(笑)。
    シャヴエ
    今は銭湯も人がまばらだから(笑)。一度も注意されたことが無いです。
    なかむら
    銭湯って、よく来ている常連のおじさんとかおばさんがいて、わりとそこのルールをその人たちが作っているから、わたしは怒られたことがあります。洗面器を使ったら、「それはそこに置いておくものだから使うな」って(笑)。ルールがあるらしいです。でも大丈夫、怒られないところもありますから。
    シャヴエ
    銭湯ではイヤな思いをしたことが無いです。おばさんにはよく見られたけど(笑)。
    なかむら
    番台の(笑)。
    シャヴエ
    あっちは服を来ているのに、こっちは裸で「こんにちは」って(笑)。
    ―――――――
    外国人って、銭湯で裸になるのを嫌がりますけど、シャヴエさんは気にしないんですね。
    シャヴエ
    みんな裸だから。アメリカ人はイヤみたい。でもフランス人は大丈夫。
    なかむら
    パリには銭湯みたいなものは無いの?
    シャヴエ
    昔はありましたね。家庭内にお風呂がなかった頃には、「バン・ドゥーシュ」と言って。「バン」は風呂で、「ドゥーシュ」はシャワー。今は無くなってしまったけど。
    ―――――――
    銭湯のおじさんだけを描くとか。
    なかむら
    やってみたいですね。(中に入れないので)描けないけど(笑)。
    シャヴエ
    番台のアルバイトをしたら?(笑) 写真は撮れないけどね、観察して。
    ―――――――
    最近のフランス人って、あんまり肉を食べなかったりしますけど、シャヴエさんは内蔵も含めてなんでも食べますよね。日本食でも、ほとんど食べられない食材がないみたいですし。
    シャヴエ
    金曜日は、昔のフランスではお魚の日だったんです。宗教の関係で。金曜日は神様が亡くなった日だから、お肉を遠慮する日っていうことで。ぼくは小さい頃、昼間はお祖母ちゃんの家に行っていたんですが、お祖母ちゃんは昔からの習慣を守っていたから、金曜日は魚料理でした。で、木曜日は脳みそ。
    なかむら
    脳みそは家でどうやって食べるんですか?
    シャヴエ
    子牛の小さいものを市場で買ってきて。たしか、既にある程度調理してあるやつだったと思います。食べたら頭が良くなるって言われてたのに、結局そんなにすごく頭が良くなったわけではなかった(笑)。昔から、形が醜いものとか「うわあっ」て思うようなものは、「健康に良い」って言われますよね(笑)。変なお酒が出ると、健康に良いとされるし。科学的根拠はないんでしょうけど。
  • 薬は「マグロ味」

    なかむら
    あ、そうだ、いっこ訊きたいことがあったんですけど。これ、薬に「マグロ味」って(と『東京散歩』P26を開く)、
    シャヴエ
    それはただの冗談(笑)。インフルエンザで3週間何もできずにいたから、すごい疲れちゃって。
    なかむら
    冗談がわかりにくい(笑)。
    シャヴエ
    頭も痛いし、ずっと食欲が無いから、薬が食事みたいになった。おまじないのように、薬を食べ物に見立てたんです。マグロの嫌いな日本人はいないでしょ?「寿司の味」って書いても良かったんですけど。
    なかむら
    そういうことか。わかりました。本当にそういう味がしたのかと思って。鉄分みたいな味がするからなのかなとか。
    シャヴエ
    そうではないです。
    なかむら
    (『東京散歩』をパラパラとめくりながら)これは色鉛筆ですよね。
    シャヴエ
    スキャンしてから、ちょっとコントラストをいじったりはしたけど。あと、絵の大きさを調整したりとか。それから、バラバラな絵を組み合わせてひとつのページにしたり、ひとつのページを切り分けたりみたいなレイアウト作業はコンピュータを使いました。 後から要素を足したページは、よく見ると下地の色が違ってたり(笑)。
    なかむら
    本当だ。
    シャヴエ
    スクリーン上では気にならなかったのに……。コンピュータを使い始めたばかりの頃だから、まだちょっとヘタ。
    なかむら
    そうなんだ。
    シャヴエ
    あと、紙の肌理が目立ちすぎると、それを少し薄めたり。使っていたノートが2冊あって、ページの表裏に描いていたんです。それを半年間持ち歩いていると、こすれて汚くなったところもあったので、それを綺麗にしたり。だから、展示するときは表裏のどちらかしか見せられないっていう……(笑)。
    なかむら
    裏面ってつるつるで描きにくそう。
    シャヴエ
    でもお金がなかったから仕方ないんです(笑)。
    ☆プロフィール
    なかむらるみ
    イラストレーター。1980年東京都新宿区生まれ。武蔵野美術大学造形学部デザイン情報学科卒。
    著書「おじさん図鑑」(小学館)。
    おじさん追跡日記(文芸春秋クレアweb)連載中

    好きなものはコーヒーとリュック。
    http://www.tsumamu.net/

Map 新宿東口(『東京散歩』本文より) *部分的に、Googleの「ストリートビュー」にリンクさせてみました。

Gallery 東京の景色(『東京散歩』本文より)

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Illustration Copyright©Florent CHAVOUET All rights Reserved.