ウォーキング・デッド


info:2016.01.25 ABOUT、STORY、CHARACTERS Update!

INTERVIEW

ロバート・カークマン インタヴュー

インタヴューについて

『ウォーキング・デッド』は、日本の慣習にならうなら「ロバート・カークマン原作」というクレジットになるだろう。
もちろん日本のマンガの場合でも「原作」のニュアンスは様々だが、一般的なイメージでは「原作者がストーリーを考えて、作画担当すなわちマンガ家がそれを作品として具現化する」ということだろうか。 作品に「署名」をしているのは、どちらかといえば作画担当者であることが多い。だが、特にアメリカのコミックは、映画のように作られることが多い。
そこでは「原作者」が「脚本家」兼「監督」の役割を果たす。加えて本作の場合、巻末の付録「スケッチブック」でも語られている通り、企画を出版社に持ち込んだのもカークマン自身であったという意味では、「プロデューサー」でもあるということになるだろう。つまり、この作品のすべてに関して責任を負っているのは、ロバート・カークマンなのである。そして、絵を描けなくても、彼は「コミック作家」なのである。
だから、「ロバート・カークマン作」というクレジットになる。

 ちなみに、主に「撮影監督」兼「俳優」の役割を果たしていると言える作画担当者について言えば、本書では、第一章のトニー・ムーアから第二章以降のチャーリー・アドラードへと、途中交替すらしている。ムーアのスケジュールの都合とされているが、ヴィジュアルに最も重きが置かれる日本のマンガでは起こりえない事態だろう。もちろん本作やアメリカのコミックにおいて作画担当者が軽視されているわけではなく、むしろ日本にも増して「アーティスト」としての地位が確立されているという印象がある。あくまで「監督」のヴィジョンを実現する高いスキルを持った「アーティスト」として。

 そもそも大人向けのコミック作品は、「グラフィック・ノベル」と呼ばれることが多い。コミックと小説の中間、という意味合いに由来するのだろうか。「グラフィック」の先鋭性に大きく振られた作品もあれば、逆に、言葉に大きな比重の置かれた作品もある。『ウォーキング・デッド』は、後者の中に位置づけられるだろう。輪郭のハッキリとした登場人物たちによる明確な物語が、言葉の力を怖れることなく、それを思うままに駆使することで、巧みにエンターテイメントとしてヴィジュアル化されている。  要するにこの作品は、語られるべきことをあますことなく語り尽くしている。すべては我々の手にした、この本の中にある。思わせぶりなところはいっさいない。だから本当のところ、「作者」に尋ねるべきこともないのだが、「作者」の頭のうちをちらりとのぞき見る事で、作品を楽しむ新たな角度が生まれる可能性もある。

 そういうわけで、この作品のヒット以降多忙を極め、メール・インタヴューのたぐいはいっさい断っているというカークマンにムリをねじ込み、いくつかの質問に答えてもらった。
何回かに分割してここに掲載したいと思う(なお、さほど数があるわけではないが、先の展開に触れる可能性のある質問には、【!】マークを付したのでご注意をお願いしたい)。

INTERVIEW PART 01

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『ウォーキング・デッド』を、「けっして終わる事のない壮大な年代記として着想した」という意味のことを、「まえがき」に書かれています。
 おそらくその瞬間からこのシリーズは、我々の生きている世界の精確な描写であり風刺でもあることを運命づけられたのではないでしょうか。この作品が「ジョージ・A・ロメロ流」、すなわち非常に高い思索性を持った「ゾンビもの」の最新型として成立するに際して、「9.11」という出来事は、どのくらいのインパクトを持ちましたか?
カークマン
『ウォーキング・デッド』の制作が始まったのは、2002年の終わりくらいのことなんだ。だから、もちろん9.11は関係があるよ。あの頃は、みんなそのことばっかり考えていたし、ぼくらにとっては恐怖の一時期だった。狂ったことがたくさん起こってたからね。炭疽菌が郵便で送り届けられるだとか。ほかにもいろいろ、結局実際には起こらなかったことでみんなの頭はいっぱいになっていた。だから「世界の終わり」についてもさかんに議論されていた。そんなこともあって、「世界の終わり」を生き延びて、その「終わり」の後にやって来る事態の中で生きていくのがどんなにヒドイことになるのかなあなんて、ぼくも考え始めたんだ。しかもちょうどその頃、ぼくは大量のゾンビ映画を観直していた。特にロメロの映画をね。それで、「けっして終わらないゾンビ映画」を作るっていうアイディアが生まれたんだ。そんな風にあれやこれや考えていたことを全部ひとまとめにして、ひとつのプロジェクトの中にぶち込むことで生まれ出たのが、『ウォーキング・デッド』だったんだ。
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2003年くらいにはじまり、もうほとんど十年くらいの間、「ゾンビもの」(や「ポスト・アポカリプスもの」)が世界を席巻していると言われています。あなたはそう思いますか? 思うとすればその理由は何でしょう?
カークマン
気晴らしになるんだよね。今の世界はあまりにヒドイことだらけでしょう? 経済破綻、異常気象、近い将来やってくることになっている大きな自然災害とか……。だから、現実よりもはるかにヒドイことの起こっている世界の中で、架空の人間たちが悲惨な目に遭い続けるっていうお話をフィクションとして経験することは、ほんの少しだけ、ぼくたちをラクな気持ちにさせてくれるんだ。ぼくはそう思うよ。

インタヴュー・文=編集部

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