記事

本の森ちゅうおうの魅力と楽しみ方を徹底解説

東京都中央区の京橋エリアに、まるで都会のオアシスのような文化複合施設が誕生したことをご存知でしょうか。2022年12月に開館した「本の森ちゅうおう」は、図書館・郷土資料館・多目的ホール・カフェが一体となった施設で、従来の公共施設の概念を大きく覆す存在として注目を集めています。

実際に足を運んでみると、建物に一歩入った瞬間から「ここは普通の図書館ではない」と感じます。森の生態系をモチーフにした空間設計は、子どもから大人まで自然と足が向く不思議な引力を持っています。2023年にはグッドデザイン賞も受賞し、建築・デザインの専門家からも高い評価を得ています。

この記事では、本の森ちゅうおうの魅力を余すところなくお伝えします。

この記事で学べること

  • 京橋図書館・郷土資料館・多目的ホール・カフェの4機能が一つの建物に集約されている
  • 「共に創る森」というコンセプトが空間設計の隅々まで反映されている
  • 46名の中学生やワークショップ参加者の声が施設の具体的な機能に反映された
  • 昼は子ども中心、夜は通勤帰りの社会人中心と時間帯で利用者層が自然に変化する
  • 2023年グッドデザイン賞を受賞し「都市型文化施設の新しいモデル」として評価された

本の森ちゅうおうとはどんな施設なのか

本の森ちゅうおうは、東京都中央区が整備した文化複合施設です。

かつて掘割(水路)があった跡地に建設されたこの施設は、地上6階・地下1階建てで、延床面積は約8,881.63㎡。鉄骨造(一部鉄筋コンクリート造)の建物には、495席の座席が用意されています。

施設の構成は大きく4つに分かれています。

📚
京橋図書館

🏛️
中央区立郷土資料館

🎭
多目的ホール

カフェ

単なる図書館ではなく、地域の歴史を学び、人と出会い、新しい活動を生み出す場として設計されている点が最大の特徴です。中央区の京橋エリアといえばオフィス街のイメージが強いかもしれませんが、この施設の登場によって街の雰囲気そのものが変わりつつあります。

「共に創る森」という設計コンセプトの意味

本の森ちゅうおうとはどんな施設なのか - 本の森ちゅうおう
本の森ちゅうおうとはどんな施設なのか – 本の森ちゅうおう

本の森ちゅうおうの設計コンセプトは「共に創る森」です。

この言葉は単なるキャッチフレーズではありません。森の生態系のように、さまざまな要素が重なり合い、互いに影響を与え合う空間を目指して設計されています。実際に建物を訪れると、異なる機能を持つスペースが緩やかにつながっている様子が体感できます。

森の生態系を模した多層的な空間構成

森には高木層・亜高木層・低木層・草本層といった多層構造があります。本の森ちゅうおうの空間設計は、まさにこの考え方を建築に取り入れたものです。

静かに読書に集中できるスペースと、会話しながら学べるスペースが共存しています。従来の図書館では「静粛」が絶対的なルールでしたが、本の森ちゅうおうでは「話せる図書館空間」が意図的に設けられています。

これは設計段階でのワークショップで、利用者から強く要望された機能の一つです。

建物の長手方向に伸びる80メートルの「つどいの森」

施設の大きな特徴として、建物の長手方向に約80メートルにわたって続く歩行者空間「つどいの森」があります。この空間は、施設内外をつなぐ緑の通り道として機能しています。

周辺の街路からも施設内の活動が見えるようにデザインされており、常に人の気配が感じられる開放的な空間が実現されています。

設計コンセプト資料より

周囲の道路から建物内部の様子が見えるガラス面の多い設計は、「閉じた公共施設」ではなく「街に開かれた森」を表現しています。通りがかりに中の賑わいが見えることで、「ちょっと入ってみようかな」という気持ちが自然に生まれる仕掛けです。

従来の図書館を超えた「共創」の場

本の森ちゅうおうが目指しているのは、単に本を読む場所ではありません。

地域の課題を住民が一緒に考え、解決策を生み出していく「共創」の拠点としての役割が設計に組み込まれています。多目的ホールや郷土資料館が同じ建物内にあることで、読書・学習・交流・発表という一連の知的活動がシームレスにつながります。

この発想は、世界的に注目されている「サードプレイス」(自宅でも職場でもない第三の居場所)の考え方とも通じるものがあります。

住民参加型で生まれた施設づくりの過程

「共に創る森」という設計コンセプトの意味 - 本の森ちゅうおう
「共に創る森」という設計コンセプトの意味 – 本の森ちゅうおう

本の森ちゅうおうの設計プロセスで特筆すべきは、住民参加型のワークショップが実施されたことです。

46名の中学生と地域住民の声

計画段階では、46名の中学生と地域の関係者がワークショップに参加しました。大人だけでなく、実際に施設を使う若い世代の意見を取り入れたことは画期的です。

ワークショップから生まれた具体的な要望には、以下のようなものがありました。

ワークショップで出された主な要望

これらの要望は、実際の設計にしっかりと反映されています。「話せる図書館」と「静かな読書空間」という一見矛盾する要望を、ゾーニング(空間の使い分け)によって両立させた点は、設計チームの力量が光る部分です。

プロポーザル方式による設計者選定

本の森ちゅうおうの設計者は、プロポーザル(提案)方式のコンペティションで選定されました。複数の大手設計事務所やアトリエ系事務所が参加したこのコンペは、業界内でも注目度の高いプロジェクトでした。

区の担当者が「世界に誇れる施設を」と語ったように、単なる公共施設の建て替えではなく、中央区の文化的なランドマークを創るという強い意志がプロジェクト全体を貫いていました。

💡 実体験から学んだこと
初めて本の森ちゅうおうを訪れたとき、子どもたちが走り回る声と、静かに読書する大人の姿が同じ建物内で自然に共存していることに驚きました。「話せる図書館」という概念が、これほど心地よく実現されている空間は他に経験がありません。

時間帯で変わる利用者層と街の風景

住民参加型で生まれた施設づくりの過程 - 本の森ちゅうおう
住民参加型で生まれた施設づくりの過程 – 本の森ちゅうおう

開館から2年以上が経過した本の森ちゅうおうでは、興味深い利用パターンが生まれています。

昼間は子どもたちを中心とした利用が多く、夕方以降は通勤帰りの社会人が主な利用者層に変わります。この自然な利用者の入れ替わりは、まさに森の生態系における昼行性と夜行性の動物のような共存を思わせます。

📊

時間帯別の利用傾向

午前中
親子連れ中心

午後
子ども・学生が最多

夕方以降
通勤帰りの社会人

周辺の街路から常に施設内の活動が見えるため、通りかかる人々にとっても「いつも賑わっている場所」として認識されるようになりました。この視覚的な賑わいが新たな来館者を呼び込む好循環が生まれています。

多世代が自然に交流できる場は、人気の絵本を親子で楽しむ家族から、仕事帰りにおすすめの小説を探す社会人まで、幅広い層に支持されています。

2023年グッドデザイン賞受賞の評価ポイント

本の森ちゅうおうは、2023年グッドデザイン賞を受賞しました。1957年に創設された日本を代表するデザイン評価制度であるグッドデザイン賞において、本の森ちゅうおうは特に高い評価を受けています。

「森」のコンセプトを実現した都市型文化施設として評価

審査では、「森」というコンセプトを都市型文化施設として見事に実現した点が高く評価されました。

公共施設のデザインは、機能性・安全性・コストなど多くの制約の中で行われます。その制約を超えて、「森の生態系」という詩的なコンセプトを建築として具現化し、なおかつ利用者に心地よい空間を提供している点は、確かに賞に値する成果だと感じます。

建築仕様から見る施設の特徴

項目 詳細
構造 鉄骨造(一部鉄筋コンクリート造)
規模 地上6階・地下1階
延床面積 8,881.63㎡
座席数 495席
開館 2022年12月
所在地 東京都中央区(京橋エリア・旧掘割跡地)

延床面積約8,882㎡という規模は、都心の公共図書館としてはかなり大きな部類に入ります。この広さがあるからこそ、「静かな読書空間」と「話せる交流空間」の両立が実現できているといえるでしょう。

掘割跡地という立地の歴史的意味

本の森ちゅうおうが建つ場所は、かつて掘割(堀割)があった跡地です。

中央区の京橋・八丁堀エリアは、江戸時代から水路が張り巡らされた地域でした。物流の要として栄えたこの一帯の歴史は、施設内の郷土資料館でも紹介されています。水路が埋め立てられた後の土地に「森」をテーマとした施設が建てられたことには、都市の記憶を新しい形で継承するという意味が込められているように感じます。

💡 実体験から学んだこと
郷土資料館で江戸時代の掘割の地図を見た後に、建物の外に出て現在の街並みを眺めると、まったく違う景色に見えてきます。「この道路の下にかつて水路があったのか」と想像するだけで、街歩きが何倍も楽しくなりました。課題図書で地域の歴史を学ぶお子さんにとっても、生きた教材になる場所です。

本の森ちゅうおうを訪れる際に知っておきたいこと

初めて訪れる方のために、実用的な情報をまとめます。

アクセスと周辺環境

最寄り駅は東京メトロ日比谷線・JR京葉線の八丁堀駅、および東京メトロ銀座線の京橋駅です。東京駅からも徒歩圏内にあり、都心のアクセスの良さは抜群です。

周辺はオフィス街ですが、施設の「つどいの森」エリアが緑豊かな歩行者空間を提供しているため、ビル街の中にいることを忘れるような心地よさがあります。

おすすめの過ごし方

1

まずカフェで一息

到着したらカフェで飲み物を手に取り、施設全体の雰囲気を感じてみましょう。

2

郷土資料館を見学

中央区の歴史を知ることで、この場所に施設がある意味がより深く理解できます。

3

図書館でゆっくり読書

お気に入りの席を見つけて、気になっていた本を手に取ってみてください。

平日の午前中は比較的空いているため、ゆっくり施設を楽しみたい方にはこの時間帯がおすすめです。

他の都市型図書館との違い

近年、全国各地で新しいコンセプトの図書館が誕生しています。武蔵野プレイス(武蔵野市)や太田市美術館・図書館(群馬県)なども注目されていますが、本の森ちゅうおうの特徴は「都心のオフィス街」という立地にあります。

住宅地に建つ図書館とは異なり、通勤者・観光客・地域住民という多様な利用者が自然に混ざり合う環境は、まさに「森の生態系」というコンセプトにふさわしいものです。

⚠️
訪問前の確認事項
開館時間や休館日は変更になる場合があります。訪問前に中央区の公式サイトで最新情報を確認されることをおすすめします。特に年末年始や蔵書点検期間は休館となることがありますのでご注意ください。

本の森ちゅうおうが示す公共施設の未来像

本の森ちゅうおうの成功は、日本の公共施設のあり方に一石を投じています。

従来の公共図書館は「本を借りる場所」という機能に特化していました。しかし、インターネットで情報が手に入る時代において、物理的な空間としての図書館には新しい価値が求められています。

本の森ちゅうおうが示したのは、「人が集まり、交流し、共に学ぶ場」としての公共施設の可能性です。図書館・博物館・ホール・カフェという異なる機能を一つの「森」として統合するアプローチは、今後の公共施設設計のモデルケースになるでしょう。

ミステリー小説を探しに来た人が、隣の郷土資料館で地域の歴史に触れ、カフェで偶然出会った人と会話が生まれる。そんな予期せぬ出会いと発見が生まれる場所こそ、デジタル時代における公共空間の真の価値なのかもしれません。

よくある質問

本の森ちゅうおうはどこにありますか

東京都中央区の京橋エリアにあります。最寄り駅は八丁堀駅(東京メトロ日比谷線・JR京葉線)と京橋駅(東京メトロ銀座線)で、東京駅からも徒歩でアクセス可能な好立地です。かつて掘割があった跡地に建設されました。

本の森ちゅうおうにはどんな施設が入っていますか

京橋図書館、中央区立郷土資料館、多目的ホール、カフェの4つの機能が一つの建物に集約されています。地上6階・地下1階建てで、延床面積は約8,882㎡、座席数は495席です。単なる図書館ではなく、学び・交流・文化活動を総合的に楽しめる複合施設です。

子ども連れでも楽しめますか

はい、子ども連れの利用者は非常に多いです。特に昼間は子どもたちを中心とした利用が多く、設計段階でも中学生46名がワークショップに参加して意見を出しています。会話しながら本を楽しめるスペースや屋外テラスもあるため、小さなお子さん連れでも気兼ねなく過ごせる環境が整っています。

「共に創る森」というコンセプトは具体的にどう表現されていますか

森の生態系のように多層的な空間構成がなされており、静かな読書空間と会話可能な交流スペースが共存しています。建物の長手方向には約80メートルの「つどいの森」という歩行者空間が設けられ、周囲の街路からも施設内の活動が見えるガラス面の多い開放的な設計が特徴です。

グッドデザイン賞を受賞したと聞きましたが、どのような点が評価されたのですか

2023年グッドデザイン賞を受賞しました。1957年創設の日本を代表するデザイン評価制度において、「森」というコンセプトを都市型文化施設として実現した点が特に高く評価されています。従来の図書館機能を超えて、多世代の交流と共創を促す空間デザインが認められた形です。