森の図書室の魅力と利用方法を徹底解説
渋谷の喧騒を抜け、道玄坂を登った先のビルの3階に、ちょっと不思議な空間が隠れています。インターホンを押して扉を開けると、そこには約1万冊の本と、お酒の香りが漂う「大人のための図書室」が広がっています。森の図書室は、2014年の開業以来、従来の図書館ともブックカフェとも異なる独自のスタイルで、本好きの大人たちを魅了し続けてきました。
個人的に初めて訪れたとき、「図書館なのにお酒が飲める」「話し声もOK」という自由さに驚いたことを今でも覚えています。静かに本を読む場所という固定観念を心地よく壊してくれる、そんな場所です。
この記事で学べること
- 森の図書室は会員制で年会費約1万円、非会員でも席料500円で利用可能
- 小説に登場する料理を再現したメニューが最大の特徴で、お酒も楽しめる
- クラウドファンディングで当時の日本記録となる約1,000万円を集めて開業した
- Facebookアカウントがあれば誰でも無料で本を借りられる仕組みがある
- 渋谷本店と表参道ヒルズ店で料金体系やコンセプトが大きく異なる
森の図書室とは何か
森の図書室は、一言で表すなら「お酒を飲みながら本が読める、大人のための私設図書室」。2014年4月、渋谷区円山町にオープンしたこの施設は、従来の図書館の常識をすべて覆すコンセプトで話題になりました。
一般的な図書館では「静かにすること」「飲食禁止」が当たり前です。しかし森の図書室では、会話もお酒もすべてOK。むしろ、本を片手に友人と語り合ったり、文学作品に登場する料理を味わったりすることが推奨されています。
この「大人の図書室」というコンセプトは、創設者である森俊介氏が中学生の頃から温めてきた夢でした。
創設者・森俊介氏の想いとクラウドファンディングの成功
森俊介氏は開業当時30歳。中学生の頃から「自分だけの図書館を作りたい」という夢を持ち続けていました。しかし、本格的な図書館を個人で設立するのは現実的に難しい。そこで彼が考えたのが、「図書館」ではなく「図書室」という形。友人の家に遊びに行くような気軽さで本と触れ合える空間を目指したのです。
開業資金の調達には、当時まだ日本では珍しかったクラウドファンディングを活用しました。結果は驚くべきもので、1,737人の支援者から約1,000万円を集め、当時の日本におけるクラウドファンディングの記録を打ち立てました。
これだけ多くの人が支援したという事実は、「こんな場所が欲しかった」という潜在的なニーズの大きさを物語っています。本が好きだけれど、静かすぎる図書館は少し窮屈に感じる。カフェでは本の品揃えに限界がある。そんなジレンマを抱えていた大人たちの心を、森の図書室のコンセプトは見事に捉えたのでしょう。
アクセスと基本情報

渋谷本店(メインロケーション)
渋谷本店は、渋谷駅から道玄坂方面へ徒歩約7分の場所にあります。ビルの3階という立地は、街の喧騒から一歩離れた隠れ家的な雰囲気を演出しています。
非会員の方は、建物の入口でインターホンを押して入室する仕組みになっています。この「インターホンを押す」という一手間が、日常から非日常へ切り替わる儀式のようで、実際に訪れると独特のワクワク感があります。
お酒と本が楽しめる大人の隠れ家図書室
カフェ型私設図書室
渋谷区円山町5-3 萩原ビル3F
渋谷駅から道玄坂方面へ徒歩約7分
昼 11:00〜17:00 / 夜 18:00〜翌1:00(金土祝前日は翌2:00まで)
不定休
平日の昼間が比較的空いており、ゆっくり読書を楽しめます
表参道ヒルズ店
森の図書室は表参道ヒルズにも2号店を展開しています。こちらは渋谷本店とは運営モデルが大きく異なり、席料が無料で、飲食代のみで利用できるオープンな形式。
渋谷本店の「隠れ家的な会員制空間」とは対照的に、表参道ヒルズ店はよりカジュアルに立ち寄れる設計になっています。初めての方は、まず表参道ヒルズ店で雰囲気を体験してから、渋谷本店の会員になるかどうかを検討するのも良い方法かもしれません。
会員制度と料金システム

森の図書室の利用方法を理解するうえで、最も重要なのが会員制度です。
会員と非会員の違い
会員の特典
- 席料が無料になる
- カードキーで自由に出入りできる
- 施設内に自分のおすすめ本を展示できる
- 年会費:約10,000〜10,800円
非会員の利用
- 席料500円が必要
- インターホンで入室を申し出る
- 本の閲覧・飲食は会員と同様に可能
- 気軽に一度試してみたい方向け
年会費が約1万円と聞くと高く感じるかもしれません。しかし、月額に換算すると約830〜900円です。渋谷でカフェに月1回行く程度の金額で、1万冊以上の蔵書にアクセスでき、席料も無料になると考えれば、頻繁に利用する方にとっては十分に元が取れる設定です。
なお、開業1周年の2015年7月までに入会した方は、年会費不要の永久会員資格を取得できたそうです。クラウドファンディングの支援者を含め、初期から応援してくれた人々への感謝が感じられるエピソードです。
空間デザインと雰囲気

森の図書室の魅力は、本のラインナップだけではありません。空間そのものが、訪れる人の心を解きほぐすように設計されています。
インダストリアルな内装デザイン
店内に足を踏み入れてまず目に入るのは、工事現場の足場材をリサイクルした床板と、コンクリート打ちっぱなしの天井に走る配管。
一見すると無骨なインダストリアルデザインですが、そこに暖かみのある照明と大量の本が加わることで、不思議と居心地の良い空間に仕上がっています。コンセプトは「友人の家にふらっと遊びに行くような」場所。まさにその言葉通り、肩の力を抜いて過ごせる雰囲気があります。
座席レイアウト
座席は主にカウンター席を中心に、窓際のソファ席、テーブル席とソファ席のミックスなど、さまざまなタイプが用意されています。
一人で集中して読書したい場合はカウンター席、友人と本について語り合いたい場合はソファ席というように、その日の気分や目的に合わせて選べるのがありがたいポイントです。
ただし、本棚は座席エリアの周囲に配置されているため、混雑時には他のお客さんの横を通って本を選ぶ必要があります。また、BGMの音量がやや大きめという声もあるので、完全な静寂を求める方には向かないかもしれません。逆に言えば、多少の話し声やBGMの中でリラックスして本を楽しみたい方にはぴったりの環境です。
設備面の充実
実用的な面では、無料Wi-Fiと電源コンセントが完備されています。これは仕事や勉強をしながら利用したい方にとって大きなメリットです。渋谷エリアで電源のあるカフェを探し回る必要がなくなります。
蔵書の特徴と本との出会い方
約1万冊以上の蔵書のうち、約90%が日本語の小説です。これに加えて、エッセイ、ビジネス書、漫画、絵本なども揃っています。
興味深いのは、特定の整理システムが存在しないこと。一般的な図書館のように十進分類法で整理されているわけではなく、ある意味で「探す楽しみ」が残されています。目的の本を効率的に見つけるには不向きかもしれませんが、思いがけない一冊との出会いが生まれやすい仕組みとも言えます。
小説おすすめの情報を参考にしながら、事前に読みたいジャンルの目星をつけておくと、店内での本探しがより楽しくなるでしょう。
会員のおすすめ本棚
蔵書の中でも特に人気が高いのが、施設の奥にある「会員のおすすめ本棚」です。
このコーナーには、会員が自分のお気に入りの本を持ち寄って展示しています。なぜその本を選んだのか、どんな思い入れがあるのか——直接的な説明はなくても、選書のセンスから推察する楽しみがあります。
書店の「店員のおすすめ」コーナーに近い感覚ですが、プロではなく一般の本好きが選んでいるからこその親近感と発見があります。村上春樹おすすめ作品やミステリー小説など、さまざまなジャンルの名作が会員の目線で紹介されているのを見ると、読書の幅が自然と広がっていきます。
文学作品にインスパイアされたフードメニュー
森の図書室を他のブックカフェと決定的に差別化しているのが、小説や文学作品に登場する料理を再現したフードメニューです。
これは単なる「おしゃれなネーミング」ではありません。実際の作品に描かれた料理を、できる限り忠実に再現しようという試みです。本を読んでいて「この料理、食べてみたい」と思ったことがある方は多いのではないでしょうか。その夢を叶えてくれる場所なのです。
代表的なメニュー
文学作品から生まれた人気メニュー
特に一番人気の「パパの好きなキッシュ」は、梨木香歩の名作『西の魔女が死んだ』に登場する料理です。物語を読んだことがある方なら、その温かい世界観を味わいながら食べるキッシュは格別の体験になるでしょう。
お酒も提供されており、軽いおつまみとともに夜遅くまで読書を楽しむことができます。さらに、コースターには店主おすすめの本が印刷されているという細やかな演出も。ふとコースターに目をやると、次に読みたい本が見つかるかもしれません。
本の貸し出しシステム
意外に知られていないのが、森の図書室では本の貸し出しが完全無料で行われていることです。
貸し出し管理はFacebookベースのシステムで運用されています。Facebookアカウントを持っていれば、会員・非会員を問わず本を借りることができます。一般的な図書館のような貸出カードや複雑な手続きは不要です。
この仕組みには、SNSを通じた緩やかなコミュニティ形成という側面もあります。本を借りた人同士がFacebook上でつながり、読書の感想を共有するといった交流が生まれる可能性も秘めています。
イベントとコミュニティ活動
森の図書室は単なる読書空間にとどまらず、本を軸にした多彩なイベントを定期的に開催しています。
読書イベント
みんなで同じ空間で読書を楽しむ会や、本の交換イベントなど
作家トークショー
作家を招いたトークイベントで、創作の裏側に触れられる貴重な機会
ユニークな企画
サイレントディスコ、夏祭り、AI婚活イベントなど、本の枠を超えた多彩な企画
サイレントディスコやAI婚活イベントなど、一見すると図書室とは無関係に思えるイベントも開催されているのが面白いところです。「本がある空間」を起点にしつつも、人と人とのつながりを生み出すことを大切にしている姿勢が伝わってきます。
本の交換イベントやコミュニティ募金活動なども行われており、単に本を読む場所ではなく、本を愛する人々のコミュニティハブとしての機能も果たしています。
森の図書室を最大限楽しむためのヒント
これまでの情報を踏まえ、初めて訪れる方に向けた実践的なアドバイスをまとめます。
訪問前の準備チェックリスト
おすすめの利用シーン
経験上、森の図書室が特に輝くのは以下のようなシーンです。
一人で過ごしたい夜に。仕事帰りに渋谷で途中下車して、お酒を片手に気になっていた小説を読む。深夜1時(金土は2時)まで営業しているので、時間を気にせずゆっくり過ごせます。
読書好きの友人とのデートに。「静かにしなきゃ」というプレッシャーがないので、本の感想を語り合いながら過ごせます。文学メニューを注文して、その作品について話すのも盛り上がります。
新しい本との出会いを求めているときに。整理されていない本棚を眺める中で、普段なら手に取らないジャンルの本に出会えることがあります。会員のおすすめ本棚も、新たな読書の扉を開いてくれます。
東京の本屋おすすめを巡る中で森の図書室に立ち寄れば、書店とはまた違った本との関わり方を体験できるでしょう。
他のブックカフェとの違い
東京には多くのブックカフェがありますが、森の図書室には他にはない独自の特徴があります。
森の図書室と一般的なブックカフェの比較
最大の違いは「コンセプトの深さ」です。一般的なブックカフェは「本が置いてあるカフェ」ですが、森の図書室は「図書室にカフェ機能がついた空間」。主役はあくまで本であり、飲食はその体験を豊かにするための要素という位置づけです。
文学作品から再現したメニュー、会員が作る本棚、クラウドファンディングで生まれたコミュニティ——これらすべてが「本を中心にした人のつながり」を生み出す仕組みになっています。
よくある質問
予約なしでも入れますか?
非会員の方は予約なしで訪問可能ですが、入口でインターホンを押して入室する形式です。混雑状況によっては待つ場合もあるため、特に週末の夜は余裕を持って訪れることをおすすめします。会員はカードキーで自由に出入りできるため、予約の必要はありません。
子ども連れでも利用できますか?
蔵書には絵本や児童書も含まれていますが、基本的には「大人のための図書室」というコンセプトです。お酒を提供する場でもあるため、特に夜の時間帯は大人向けの雰囲気になります。お子様連れでの訪問を検討される場合は、昼の時間帯が適しているでしょう。事前に施設へ確認されることをおすすめします。
どのくらいの時間滞在できますか?
明確な時間制限は設けられていないようです。席料(非会員500円)を支払えば、営業時間内は自由に過ごせます。実際に数時間滞在して読書を楽しむ方も多いようです。ただし、混雑時は周囲への配慮も大切です。
表参道ヒルズ店と渋谷本店のどちらがおすすめですか?
初めての方には、席料無料でカジュアルに立ち寄れる表参道ヒルズ店から試すのがおすすめです。森の図書室の雰囲気を気に入ったら、よりディープな体験ができる渋谷本店の会員になることを検討してみてください。渋谷本店は隠れ家的な空間で、会員コミュニティとの交流も楽しめます。
Wi-Fiや電源はありますか?
はい、無料Wi-Fiと電源コンセントが完備されています。読書だけでなく、ノートパソコンでの作業やスマートフォンの充電も問題ありません。渋谷エリアで電源のある落ち着いた作業スペースを探している方にとっても、選択肢の一つになるでしょう。
まとめ
森の図書室は、「図書館は静かにしなければならない」という常識を心地よく覆してくれる場所です。
約1万冊の蔵書、文学作品から生まれたフードメニュー、お酒を片手にくつろげる空間、そして本を愛する人々のコミュニティ。これらの要素が一つになって、渋谷の片隅に唯一無二の「大人の図書室」を作り上げています。
中学生の頃の夢をクラウドファンディングで実現した創設者・森俊介氏の想いは、1,737人の支援者を経て、今も多くの本好きに届き続けています。
渋谷を訪れる機会があれば、道玄坂を少し上がって、インターホンを押してみてください。扉の向こうには、本との新しい出会いが待っています。